環境中微量化学物質に対する感受性の動物種差、個人差の解明:高精度リスク評価法の開発

文献情報

文献番号
200401314A
報告書区分
総括
研究課題名
環境中微量化学物質に対する感受性の動物種差、個人差の解明:高精度リスク評価法の開発
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 貴彦(宮崎大学(医学部))
研究分担者(所属機関)
  • 黒田 嘉紀(宮崎大学(医学部))
  • 中尾 裕之(宮崎大学(医学部))
  • 平野 靖史郎(独立行政法人国立環境研究所)
  • 嵐谷 奎一(産業医科大学(産業保健学部))
  • 欅田 尚樹(産業医科大学(産業保健学部))
  • 笛田 由紀子(産業医科大学(産業保健学部))
  • 関 直彦(千葉大学(医学部))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
11,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、身辺に存在する化学物質の種類の増加やオフィス・住宅建材の変化・気密性の増加などによって種々な症状を訴える人が増加している。これらの症状は、シックハウス症候群、多種化学物質過敏状態 (MCS) などの名称で呼ばれているが、その概念・病態については十分に解明されていない。本研究では、化学物質によってこれらの症状を引き起こす人々を「化学物質高感受性集団」(Chemical Hyper susceptible Population: 以下CHPと略)と定義し、その病態を明らかにし、「室内環境中化学物質に対する健康影響マニュアル」の作成を最終目的とした。
研究方法
基礎的実験、分子疫学研究を実施。また、CHPの原因化学物質であるクロルピリフォス、ジクロロベンゼンの薬物動態に関する文献を収集・整理した。
結果と考察
1) クロルピリフォス、ジクロロベンゼンの薬物動態に関する文献調査:
分子疫学研究の候補遺伝子選択や動物モデルによる実験結果のヒトへの外挿には、化学物質の代謝酵素に関する薬物動態学的な情報が不可欠である。本分担研究では、CHPの原因化学物質であるクロルピリフォス、ジクロロベンゼンの物理特性、毒性、薬物動態、種差、個体差に関する情報を収集・整理した。
2) CHPスクリーニングのための動物モデルの検討:
マウスを用いた低濃度ホルムアルデヒド経気道暴露系を確立し、3ヶ月にわたる暴露実験を行った。病態機序として大脳辺縁系の関与の検討を目的とし、海馬DNAチップを用いて関連チャンネル・受容体や酵素系など検討したが、我々の実験条件では遺伝子発現に関して暴露の影響は見られなかった。
3) 環境中微量化学物質の健康影響に関する分子疫学的研究
CHP発症の個体感受性要因の同定を目的としてホルムアルデヒド、アセトアルデヒドの代謝に関与するアセトアルデヒド脱水素酵素2、グルタチオン S―トランスフェラーゼ (glutathione S-transferase, GST) M1、GSTT1の遺伝子多型を分析した。しかし、いずれの遺伝子多型もCHPの感受性要因として統計学的に有意な関連性は認められなかった。
結論
3年間の研究成果とその間に得られた知見をもとに主に医学的な視点から全国の保健所の職員が住民からの各種相談へ対応できる「室内環境中化学物質に対する相談回答マニュアル」を作成した。

公開日・更新日

公開日
2005-05-23
更新日
-

文献情報

文献番号
200401314B
報告書区分
総合
研究課題名
環境中微量化学物質に対する感受性の動物種差、個人差の解明:高精度リスク評価法の開発
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 貴彦(宮崎大学(医学部))
研究分担者(所属機関)
  • 黒田 嘉紀(宮崎大学(医学部))
  • 中尾 裕之(宮崎大学(医学部))
  • 平野靖史郎(独立行政法人 国立環境研究所)
  • 嵐谷 奎一(産業医科大学(産業保健学部))
  • 欅田 尚樹(産業医科大学(産業保健学部))
  • 笛田由紀子(産業医科大学(産業保健学部))
  • 関  直彦(千葉大学(医学部))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、身辺に存在する化学物質の種類の増加やオフィス・住宅建材の変化・気密性の増加などによって種々な症状を訴える人が増加している。これらの症状は、シックハウス症候群、多種化学物質過敏状態 (MCS) などの名称で呼ばれているが、その概念・病態については十分に解明されていない。本研究では、化学物質によってこれらの症状を引き起こす人々を「化学物質高感受性集団」(Chemical Hyper susceptible Population: 以下CHPと略)と定義し、その病態を明らかにし、「室内環境中化学物質に対する健康影響マニュアル」の作成を最終目的とした。
研究方法
文献レビューによって概念・定義を分析・検討するとともに、動物実験と疫学研究の2つの方法を用いて病態を明らかにすることを試みた。
結果と考察
1) マウスを用いた低濃度ホルムアルデヒド経気道暴露系を確立し、3ヶ月間の暴露実験を行った。病態機序として大脳辺縁系の関与を考え、海馬のスライス標本を用いて神経細胞群の応答性を電気生理学的に検討した。海馬CA1領域の錐体細胞の刺激-応答曲線とシナプス長期増強を調べたところ、刺激-応答曲線が暴露群で有意に異なる結果を得た。海馬DNAチップを用いて関連チャンネル・受容体や酵素系などを検討したが、遺伝子発現に関して暴露の影響は見られなかった。
2) ミラーらが作成したQEESIをもとに作成した調査票を用いて疫学調査を行った。“化学物質過敏症と診断されたことがある”と回答した人はA社0.3%、B社0.5%であり、“シックハウス症候群と診断されたことがある”と回答した人は、それぞれ0%、0.1%であった。また、CHPの個体感受性要因の同定を目的として、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドの代謝に関与する アセトアルデヒド脱水素酵素2、グルタチオン S-トランスフェラーゼ (glutathione S-transferase, GST) M1、GSTT1の遺伝子多型を分析したが、調査票スコアーとの関連性は認められなかった。
結論
化学物質の環境リスク管理は、リスクコミュニケーションを促進して社会的な合意の下に進める必要がある。3年間の研究成果をもとに、医学的な視点から県庁・保健所スタッフが住民からの各種相談へ対応できる「室内環境中化学物質に対する相談回答マニュアル」を作成した。

公開日・更新日

公開日
2005-05-23
更新日
-