ヘモグロビンアロステリーを利用した付加価値赤血球製剤の創製と救急医療への応用

文献情報

文献番号
200401222A
報告書区分
総括
研究課題名
ヘモグロビンアロステリーを利用した付加価値赤血球製剤の創製と救急医療への応用
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
末松 誠(慶應義塾大学・医学部(医化学))
研究分担者(所属機関)
  • 堀 進悟(慶應義塾大学 医学部(救急部))
  • 塚田 孝祐(慶應義塾大学 医学部(医化学))
  • 酒井 宏水(早稲田大学 理工学部(高分子化学))
  • 芹田 良平(慶應義塾大学 医学部(麻酔学))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
19,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国民の篤志で得られた限られた量の血液をできる限り多くの患者に供給するためには、少量でも有効に酸素運搬をできる付加価値赤血球製剤の開発が不可欠である。これまでの研究から赤血球が血管内の酸素濃度を感知して積極的に微小循環血流を維持する機構を有することが明らかになりつつある。本研究では赤血球の酸素運搬以外の生体制御機能を分子論的に解明し、人為的にそのメカニズムを保存赤血球に修飾することにより、酸素放出能と血流改善効果を最大限に引き出す付加価値赤血球製剤の性能評価、安全性確立を目指す。特に膜透過性の高い低分子ガス(NO, CO)による蛋白質機能修飾技術を利用した赤血球保存技術の向上と付加価値添加技術による献血血液の有効利用を展開する。
研究方法
健常人からヘパリン採血後、Hct 10%に調整した。ガスタイトバイアルにてArパージ後、NOドナー(NOR3)を添加し、Hbのα鎖に特異的にNO分子を修飾した赤血球サンプルを作製した。単離微小血管の灌流実験には白兎小脳から直径50-100μmの細動脈を摘出して用いた。出血ショックモデル実験ではWistarラットの肝臓を観察しながら、大腿動脈から0.7ml/minで脱血を行い、血圧40 mmHgを15分間維持した後,大腿静脈から輸血した。
結果と考察
ウサギの微小血管を用いた灌流実験においてCO赤血球では低酸素性の血管拡張は認められなかったが、α-NO赤血球では酸素濃度に関わらず有意な血管拡張を認めた。また、ラットの輸血実験の結果から、α-NO赤血球の循環内半減期は約1時間程度であり、血圧・心拍数の回復は洗浄ヒト赤血球と同様であった。肝臓中心静脈の酸素分圧と血流速度は洗浄赤血球と同等の回復を示した。また輸血後のBE値からα-NO赤血球は代謝性アシドーシスを改善する効果を有することを示した。今後は輸血前の赤血球保存効果にも着目し、COガスによるR-state stabilizationが保存血液の使用期限延長を可能にする効果についても検討を加える。α-NO赤血球、CO赤血球の有効利用を行うことは救急救命のQualityを向上させると共に、貴重な血液リソースの有効利用を考える上で重要と考えられる。
結論
NOをヘモグロビンに修飾した付加価値赤血球製剤の作製法を確立した。またウサギ脳単離血管、ラットの出血性ショックモデルからショックに対して有効に酸素を供給することが可能であることを示した。

公開日・更新日

公開日
2005-08-04
更新日
-