重篤な循環器系副作用(QT延長症候群等)の症例情報の収集・評価及びそれに基づく併用薬剤等のリスク因子の解明に関する研究

文献情報

文献番号
200401203A
報告書区分
総括
研究課題名
重篤な循環器系副作用(QT延長症候群等)の症例情報の収集・評価及びそれに基づく併用薬剤等のリスク因子の解明に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
鎌倉 史郎(国立循環器病センター心臓血管内科)
研究分担者(所属機関)
  • 岸田 浩(日本医科大学第1内科)
  • 新 博次(日本医科大学附属多摩永山病院内科)
  • 佐藤 信範(千葉大学大学院薬学研究院)
  • 宮本 篤(札幌医科大学医学部医療薬学)
  • 清水 渉(国立循環器病センター心臓血管内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
6,680,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
QT延長症候群(LQTS)は薬剤がもたらす副作用の中で最も重篤なものの一つである。LQTSではTorsade de Pointes(TdP)と呼ばれる致死性不整脈や突然死が生じるが、このQT延長は抗不整脈薬のみならず、非循環器系の種々の薬剤で生じることが知られている。最終年度である本年度は、1)これまでに収集した薬剤誘発性LQTSの情報に基づいてデータベースを作成し、症例検索並びに情報提供システムの基盤を作る(岸田浩、佐藤信範、新博次)。2)LQTSが女性に多い原因を動物実験により明らかにする(宮本篤)。3)心電図学的手法に基づいて遺伝子型を診断したり、薬剤性LQTSや潜在性LQTSを検出する(清水渉)。ことを目標とした。
研究方法
1)日本循環器学会誌に収載された薬剤性LQTSの症例抄録から患者情報のデータベースを作成した。またQT延長の記載のあった医薬品27成分を対象として、薬物相互作用に関するデータベースを作成し、これら文献ならびに薬物相互作用を、CD-ROMまたはWeb上で検索できるシステムを構築した。2)ラット心室筋を用いて、TdP発現に関係するアドレナリン受容体結合性を雌雄間で対比した。3)LQT1-3型のLQTS57例、対照群30例を対象としてエピネフリン(Epi)負荷試験を施行して、QTc時間からLQTS検出と遺伝子型推定を試みた。
結果と考察
1)データベースに基づいて、疾患または病態、年齢、性、薬剤の薬効分類から薬剤性LQTSの文献を検索したり、薬剤名または薬効分類から相互作用薬とその作用機序、CYP分子種、注意喚起内容を検索できるソフトウェアを開発し、CD-ROMまたはWeb上から薬剤性LQTSの情報を収集、検索できるようにした。2)ラジオレセプターアッセイ上、ラット心室筋アドレナリン受容体への結合量は雌雄で差がなかったが、親和性の増大が雌で認められ、女性とQT延長症候群との関連が明らかにされた。3)Epi試験により、潜在性を含むLQTSの検出率が90%近くまで向上し、かつ試験中のQTc時間の変化からLQTSの遺伝子型をほぼ正確に診断できることが判明した。
結論
本研究で作成したデータベースと検索用ソフトウェアにより、薬剤性LQTSの情報の収集や検索が可能となる。本CD-ROMとデータベースは、医薬品の安全対策に貢献できるだけでなく、医療関係者の研修用の資料としても活用しうると考えられた。Epi試験は遺伝子解析に先立ってLQTSの遺伝子型を推定したり、LQTSを診断できるため、治療を急ぐ例や、遺伝子診断が不能な例(40-50%)、薬剤性LQTSに有用と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2005-08-02
更新日
-

文献情報

文献番号
200401203B
報告書区分
総合
研究課題名
重篤な循環器系副作用(QT延長症候群等)の症例情報の収集・評価及びそれに基づく併用薬剤等のリスク因子の解明に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
鎌倉 史郎(国立循環器病センター心臓血管内科)
研究分担者(所属機関)
  • 岸田 浩(日本医科大学第1内科)
  • 新 博次(日本医科大学附属多摩永山病院内科)
  • 佐藤 信範(千葉大学大学院薬学研究院)
  • 宮本 篤(札幌医科大学医学部医療薬学)
  • 清水 渉(国立循環器病センター心臓血管内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
QT延長症候群(LQTS)は薬剤がもたらす副作用の中で最も重篤なものの一つである。LQTSではTorsade de Pointes(TdP)と呼ばれる致死性不整脈や突然死が生じるが、このQT延長は抗不整脈薬のみならず、非循環器系の種々の薬剤で生じることが知られている。本研究では1)薬剤誘発性LQTSの実態調査と文献情報の収集を行い、原因薬剤や発症因子を検討して、症例検索並びに情報提供システムの基盤作りを行う(岸田浩、佐藤信範、宮本篤)。2)QT時間、QTdispersion(QTD)、TWA等の心電図学的手法を用いて、QT延長のリスク評価を行い、薬剤性LQTSの診断法を確立する(新博次、清水渉)。3)動物実験によりQT延長やTdPの発症機序を明らかにし、LQTSが女性に多い原因を解明する(清水渉、宮本篤)。ことを目的とした。
研究方法
1)各医療施設へアンケートによる実態調査を行うと共に、種々の文献情報を収集して薬剤性LQTSのデータベースを作成した。2)薬剤性LQTS例でQTD、TWAを測定してその意義を明らかにした。LQTS例にエピネフリン(Epi)負荷試験を施行して、QT時間の反応から潜在性LQTSを検出したり、遺伝子型を推定する方法を検討した。3)動脈灌流ネコ左室心筋切片を用いた薬剤性LQTSモデルとラット培養心筋モデルから、QT延長とTdPの発生機序を検討し、ラット心室筋におけるアドレナリン受容体結合性を雌雄間で対比した。
結果と考察
1)調査結果と作成したデータベースに基づいて、疾患または病態、年齢、性、薬剤の薬効分類から、薬剤性LQTSの文献を検索したり、薬剤名または薬効分類から、相互作用薬とその作用機序、CYP分子種、注意喚起内容を検索できるソフトウェアを開発し、CD-ROMまたはWeb上から薬剤性LQTSの情報を収集、検索できるようにした。2)Epi試験により80%から90%の確度でLQTSの遺伝子型を診断でき、潜在性LQTSを検出できた。3)心筋チャネル電流の異常によりTDRが増大してTdPが発生すること、雌では心室筋アドレナリン受容体の親和性が増大することが判明した。
結論
本研究で作成したデータベースと検索用ソフトウェアにより、薬剤性LQTSの情報の収集や検索が可能となる。本CD-ROMに収載されたデータベースは医薬品の安全対策に貢献できるだけでなく、医療関係者の研修用の資料としても活用しうると考えられた。また本研究で用いた薬剤性LQTSモデル、分子薬理学的手法、心電図学的手法は薬剤性LQTSの発症機序の解明や診断に有用と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2005-08-02
更新日
-