薬物動態関連遺伝子多型の人種差に関する研究

文献情報

文献番号
200401193A
報告書区分
総括
研究課題名
薬物動態関連遺伝子多型の人種差に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
千葉 寛(千葉大学大学院薬学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 鹿庭なほ子(国立医薬品食品衛生研究所薬品部)
  • 越前宏俊(明治薬科大学薬学部)
  • 家入一郎(鳥取大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
11,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班の目的は、医薬品の体内動態を規定する主要な要因である薬物代謝酵素とトランスポーターに着目し、その変異遺伝子の頻度を日本人と他人種で比較することにより、医薬品の薬効と安全性に人種差が生じる原因の一端を明らかにする事である。
研究方法
本年度は、日本人、白人、黒人各150人のゲノムDNAを用いてCYP2C9、UGT1A1についての解析を継続するとともに、トランスポーターに関してはOCT1, 2, 3遺伝子の変異とメトフォルミンの非反応性との関係を、CYP3Aに関してはヒト肝ミクロソームにおけるCYP3A活性に与える、CYP3A4*2, CYP3A4*5, CYP3A4*6, CYP3A5*3の影響を日本人と白人種間で比較した。
結果と考察
CYP2C9については、CYP2C9*3 と*11が黒人種において重要であり、白人種については、CYP2C9*2と*3が、日本人についてはCYP2C9*3が重要であることを明らかにした。上記以外の変異については、存在するにしてもアレル頻度が低く、薬物投与前のスクリーニングには不向きであると考えられた。UGT1A1についてはブロックを2つに分けハプロタイプ解析を行った。その結果、グルクロン酸抱合能の低下と密接な関連にあると言われているブロック1のハプロタイプ*28、*6、*37の頻度が3人種間で大きく異なることを明らかにした。トランスポーターについては、OCT1, 2, 3遺伝子にアミノ酸置換を伴う変異を同定し、特にOCT1遺伝子のP341Lは日本人で頻度が高く、V408M変異は白人で高いことを明らかにした。一方、メトフォルミンのレスポンダーとノンレスポンダーとの相違を判別関数分析で評価し、V408M変異による効果減弱を明らかにした。CYP3Aに関しては、CYP3A4*6のヘテロ型のtestosterone6β-hydroxylation活性は野生型の約1/3の低値を示すこと、日本人、白人種すべての肝ミクロソーム検体の中で、CYP3A5*1/*1の遺伝子型を持つ検体は最も高いmidazolam水酸化活性を示し、1’-hydroxylation活性についてはCYP3A5*3との間に比較的明瞭なgene-dose effectを示すことを明らかにした。
結論
CYP2C9, UGT1A1, CYP3Aについて、変異遺伝子発現頻度の人種差を明らかにするとともに
OCT1,2,3の遺伝子型と反応性の関係を明らかにし、これらの酵素及びトランスポーターにより代謝又は輸送される薬物の人種差を考察するための基盤を構築した。

公開日・更新日

公開日
2009-07-09
更新日
-

文献情報

文献番号
200401193B
報告書区分
総合
研究課題名
薬物動態関連遺伝子多型の人種差に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
千葉 寛(千葉大学大学院薬学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 鹿庭なほ子(国立医薬品食品衛生研究所薬品部)
  • 越前宏俊(明治薬科大学薬学部)
  • 家入一郎(鳥取大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班の目的は、医薬品の体内動態を規定する主要な要因である薬物代謝酵素とトランスポーターに着目し、その変異遺伝子の発現頻度を日本人と他人種(白人種及び黒色人種)で比較することにより、医薬品の薬効と安全性に人種差が生じる原因の一端を明らかにする事である。
研究方法
平成14年度は、日本人、白人、黒人(各150人)の検体からゲノムDNAを抽出し、そのDNA試料を用いて、CYP3A,CYP2C9、UGTlAl、薬物トランスポーター(OATP-C, BCRP, OCT etc.)について、変異遺伝子の解析法の確立を行った。平成15年度は、活性に影響を与える変異を中心にこれらの遺伝子の解析を行った。平成16年度は、これらの酵素及びトランスポーターの変異遺伝子の解析を継続するとともに、一部の変異遺伝子については機能への影響をin vivo又はin vitroの系で検討した。
結果と考察
CYP2C9については、CYP2C9*3 と*11が黒人種において重要であり、白人種については、CYP2C9*2と*3が、日本人についてはCYP2C9*3が重要であることを明らかにした。UGT1A1についてはグルクロン酸抱合能の低下と密接な関連にあると言われているハプロタイプ*28、*6、*37の頻度が人種間で大きく異なることを明らかにした。トランスポーターについては、8種類のトランスポーターについて変異遺伝子の人種差を明らかにするとともに、OATP-Cの変異と機能の関係、メトフォルミンの反応性とOCT1の変異遺伝子との関係を明らかにした。CYP3Aに関しては、CYP3A4*6のヘテロ型は野生型の約1/3のCYP3A活性を示すこと、CYP3A5*1/*1の遺伝子型を持つ検体は日本人、白人種すべての肝ミクロソーム検体の中で最も高いmidazolam(MDZ)水酸化活性を示し、MDZ 1’-hydroxylation活性についてはCYP3A5*3との間に比較的明瞭なgene-dose effectを示すことを明らかにした。
結論
3種の薬物代謝酵素と8種のトランスポーターについて変異遺伝子の人種差を明らかにし、一部のトランスポーターと代謝酵素については変異と機能の関係を明らかにし、これらの酵素又はトランスポーターによって代謝又は輸送される薬物の人種差を考察する際の基盤を提供した。

公開日・更新日

公開日
2009-07-09
更新日
-