ウシ由来腸管出血性大腸菌O157の食品汚染制御に関する研究

文献情報

文献番号
200401117A
報告書区分
総括
研究課題名
ウシ由来腸管出血性大腸菌O157の食品汚染制御に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
朝倉 宏(国立医薬品食品衛生研究所食品衛生管理部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全性高度化推進研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
O157症は、96年に全国的な流行を呈した後もその発生は絶えず、食肉による事例も依然として多い。家畜は高頻度にO157を保有し、重要な感染源と認識されている。従って家畜からの汚染制御はヒトO157症の予防に必須といえるが近年の分子疫学研究の成果として、家畜のEHEC株全てが強い病原性を持つのではなく、ヒトに感染して発症させる株は一部に限られていると考えられるようになってきている。現状の食品リスク評価はO157全体を対象としているが、本症の発症菌数の低さから考えると、問題となる病原株は非病原株に対してむしろ局在していると思われ、本研究ではウシが保菌するO157の中で高い病原性を示す株の特徴及び保有率を明らかにする事で、病原株の選択的コントロール、ひいては本症のリスク評価システム構築の為の科学的根拠を得る事を目的とする。
研究方法
食肉検査段階において分離された菌株についてPFGEによる系統解析を行った。また、ウシ・ヒト由来株について代表的な病原遺伝子群の保有状況をPCR法により検討した。更に、毒素ファージ上の遺伝子群についてもPCRにより検出を試み、毒素産生性との比較を行った。3型分泌装置の一つであるETT2遺伝子領域の保有状況についてはサザンブロットにより検出を行い、ウシ由来代表株について同領域の塩基配列を決定した。
結果と考察
PFGE法によりある農場での持続的保菌及び交差汚染を示唆するデータを得た。また、ウシ・食肉・ヒト由来株における病原遺伝子の保有性は一部で非検出あるいは異なる増幅サイズを示すに留まり、由来による有意な差異は認められなかった。しかし毒素遺伝子型・産生性の違いから病原性の差異が示唆され、毒素ファージ上の遺伝子保有性が毒素産生と相関性を有することを明らかにした。更にETT2配列ではC領域にウシ由来株の一部が弱い反応を示したので、DNA配列を決定し1塩基多形性が示唆された。
結論
食肉段階での汚染状況調査により持続的保菌牛群及び交差汚染を示唆するデータを得た。ウシ・食肉・ヒト由来O157株の病原遺伝子はほぼ共通して保有していたが、毒素産生力価は、ファージ上遺伝子の保有と相関し、その分布には偏在性が認められた。ETT2領域のDNA配列についてウシ由来代表株を用いて決定した。ヒト由来株との相違は1部のみに認められ、ウシ、ヒト由来株を区別するための多形性解析への有用性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2005-06-03
更新日
-