院内感染の有効性および費用効果に関する研究

文献情報

文献番号
200401017A
報告書区分
総括
研究課題名
院内感染の有効性および費用効果に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
新保 卓郎(京都大学大学院医学研究科臨床疫学)
研究分担者(所属機関)
  • 森本 剛(京都大学医学部附属病院総合診療科)
  • 福井 次矢(聖路加国際病院内科)
  • 松村 理司(洛和会音羽病院)
  • 松井 邦彦(熊本大学医学部附属病院総合臨床研修センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
5,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究の目的は院内感染対策が耐性菌の頻度、院内感染発生率、患者の入院期間、患者死亡率に与える影響やその費用効果性を明らかにすることである。
研究方法
 メタ分析の手法を用いて院内感染対策の有効性を検討した。本年度は特に院内感染対策組織の介入内容として、教育とサーベイランスを分けて検討し、全ての院内感染症、手術部位感染症、肺炎、血流感染症、尿路感染症の4疾患について、ハザード比を統合した。
一般市中病院で市中肺炎治療に関するコホート研究を行い、市中肺炎内容・抗菌薬の使用方法・患者アウトカム・平均在院日数・医療費などを解析した。
好中球減少症の患者に対して、経口フルコナゾールの予防的投与と経静脈アンフォテリシンBのエンピリカル投与、経静脈ミカファンギンの確定診断後投与の3つの抗真菌薬治療法についての費用効果分析を行った。
1歳未満の乳児に対するオセルタミビルの安全性に関して、ヒストリカルコホート研究を行った。
結果と考察
 院内感染対策組織の介入により院内感染全体の発症率は39%、手術部位感染は11%、肺炎は41%、血流感染は52%、尿路感染は33%の減少が推定された。全院内感染では教育だけでは32%[95%信頼区間 20~43]の減少であったが、サーベイランスを併用する事により43%[95%信頼区間 32~52]の減少となり、サーベイランスを同時に行うことの有効性が確認された。
一般病院において新しい感染症教育・対策が導入されたところ、市中肺炎症例に対するカルバペネム系抗菌薬の使用が減少し、抗菌スペクトラムが狭域なβラクタム系抗菌薬の使用比率が増加していることが示された。
好中球減少症の患者に対する経口フルコナゾールの予防的投与は期待余命を1年延長するのに要する費用が652ドルであり、費用効果的な感染対策であることが示された。
オセルタミビルの処方を受けた1歳未満の乳児102人のうち、インフルエンザ脳症や死亡の発生は認められず、必ずしも致死的な副作用を引き起こすとは限らないことが示唆された。
結論
 院内感染症は死亡率が高く、国民医療費にも多大な影響を与えている。院内感染対策は安全な医療、国民の幸福の探求の上でも非常に重要であり、さらに医療費の適切な配分の視点からも早急な対策が望まれる。本研究班の平成16年度の研究は、2年目として、前年度の研究内容を発展させて、幅広く様々な院内感染対策の有効性や費用効果性に関する結果を得ることができた。

公開日・更新日

公開日
2005-07-22
更新日
-