腎不全の進展・増悪因子の解明と腎機能保護法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200400934A
報告書区分
総括
研究課題名
腎不全の進展・増悪因子の解明と腎機能保護法の開発に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
増田 智先(京都大学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
腎尿細管には、複数種の薬物トランスポータが局在し、効率的な解毒機構として機能する。高齢者を含めた腎機能低下患者では、薬物の腎排泄能の低下から薬剤性腎障害発症のリスクが潜在的に高い。尿細管分泌能の指標となる分子生物学的マーカーの不足から、予期せぬ副作用のために薬物使用の中止を余儀なくされる場合もある。本研究では慢性腎不全モデルラットを用いて経時的な腎病変の進展を分子レベルで明らかとし、尿細管トランスポータ群の分子的・機能的変動機構究明と腎機能保護因子の探索・特定を目的とした。
研究方法
慢性腎不全モデル動物として5/6腎摘出ラットを選択した。尿細管分節の単離は、模擬処置ラット(Sham)及び5/6腎摘出ラットの左腎を麻酔下で、コラゲナーゼ灌流後、冷却下実体顕微鏡下で尿細管分節の形態的特徴に着目し単離した。遺伝子発現解析は、リアルタイムPCR法による定量的なmRNA発現解析に加え、DNAチップを用いた遺伝子発現解析を試みた。動物実験については、京都大学大学院医学研究科・医学部動物実験委員会に動物実験計画書を提出し、委員会による審査・承認の上で実施した。
結果と考察
 先ず、5/6腎摘出6ヶ月後のラットを用いて、糸球体50個、近位尿細管1.5cmを単離し、total RNA抽出後DNAチップ解析を行った。その結果、近位尿細管において約27,000遺伝子の内Shamで12,196種、5/6腎摘出ラットで10,333種検出された。さらに、5/6腎摘出によって100倍以上の発現上昇が95種、一方、1/100以下に低下するものとして82種の遺伝子が抽出された。この内、30%以上の遺伝子については公のデータベース上機能未知として分類されており、新規の末期腎不全遺伝子として関連づけられることが期待された。なお、腎症の進展に伴い発現亢進することが知られている炎症性サイトカインの発現変化は認められなかった。
 次に、我々が既に確立したラット腎mRNA発現データベースを用いて、新規遺伝子群の中から推定8回以上の膜貫通部位を有するタンパク質に着目し、全長cDNAを単離後、一過性発現系並びにRNAi発現抑制系を用いて機能のスクリーニングを行った。その結果、一部の生体必須化合物の輸送に関わる新規トランスポータの同定に成功した。
結論
慢性腎不全ラットをモデル動物として、さらに単離尿細管を遺伝子発現解析のための試料として用いることにより、尿細管上皮細胞特異的な遺伝子発現変動を捉えることができた。さらに、新規トランスポータ遺伝子の単離にも成功した。

公開日・更新日

公開日
2005-05-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-04-20
更新日
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