ヒト型遺伝毒性試験系の開発とそのバリデーション

文献情報

文献番号
200400923A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト型遺伝毒性試験系の開発とそのバリデーション
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
本間 正充(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 佐々木 有(八戸工業専門学校・物質工学科)
  • 築舘 一男(エーザイ株式会社・研究開発本部)
  • 大内田 昭信(大鵬薬品工業・安全性研究所)
  • 高崎 渉(三共株式会社・安全性研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
1,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ヒト細胞,ヒト代謝系を材料とし,科学的メカニズムから,人に対する化学物質の遺伝毒性を正しく評価するためのヒト型in vitro遺伝毒性試験系の確立を目指す。
研究方法
ヒトリンパ芽球細胞株TK6,WTK-1を用いた。両細胞は同一起源をもつp53遺伝子正常,異常細胞である。14種類のモデル化合物についてコメット試験(COM),小核試験(MN),チミジンキナーゼ遺伝子突然変異試験(TK)を行い,既存の遺伝毒性データと比較した。ヒト肝S9とラット肝S9を用いてエームス試験,マウスリンフォーマ試験を行い,その結果を比較した。
結果と考察
TK6,WTK-1細胞を用いたCOM,MN,TK試験を行うための最適プロトコールを確立した。陰性対照(生理食塩水),陽性対照(MMS)対して,各細胞,TK,MNに対し,約50ずつのバックグランドデータを比較,評価したところ,極めて再現性の高い結果が得られた。このことは本試験系が,広く普及可能であることを示す。試験系の検出能力をバリデーションするため4種類の典型的遺伝毒性物質を含む14の染色体異常誘発物質について試験し,その結果を既存の遺伝毒性データと比較した。4つの遺伝毒性物質は,両細胞の3つのエンドポイントで明らかな陽性を示したが,10の染色体異常誘発物質の遺伝毒性は,細胞,および試験系によって異なる反応性を示した。全体的にヒト型試験系の結果は既存の遺伝毒性試験の結果とよく相関した。また,WTK-1はTK6より陽性と判定しやすい傾向にあった。ヒト型試験系ではヒト代謝系の導入が重要であるが,これに関しては,ヒト肝S9の遺伝毒性試験における特徴を検討した。今後,ヒト型細胞系と,ヒト型代謝系を組み合わせて,完全なヒト型in vitro遺伝毒性試験系の確立を目指したい。
結論
本共同研究で確立したヒト型遺伝毒性試験系は,簡便で,再現性があり,これまでの遺伝毒性試験結果と一致した。本試験系は,ヒト型遺伝毒性試験系として,人に対する安全性を担保しうる試験系であり,今後医薬品開発に利用できる。また,試験法としてだけでなく,DNA損傷,染色体異常,突然変異等のメカニズムの解明にも有用と考えられ,研究ツールとしての利用価値も高いと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2005-04-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-04-20
更新日
-