ゲノム情報を用いたエイズワクチン開発と発症阻止に関する基礎的研究

文献情報

文献番号
200400850A
報告書区分
総括
研究課題名
ゲノム情報を用いたエイズワクチン開発と発症阻止に関する基礎的研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
塩田 達雄(大阪大学微生物病研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 岩本 愛吉(東京大学医科学研究所)
  • 市村 宏(金沢大学大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
45,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
エイズの病態ならびに進行速度は感染者ごとに大きく異なる。本研究は、HIV感染者および非感染者についてHIVの生活環に関わる様々な宿主因子の遺伝的多型を検討し、病態進行やHIV感染感受性の違いを決定する宿主側の因子を明らかにすることを目的とする。また抗HIV薬の有効性や副作用を決定する宿主因子の同定やワクチン開発のための基礎的検討も重要な課題である。
研究方法
(1)Affymetrix社製DNAチップを利用してHIV感染者の遺伝子多型を網羅的に検討した。(2)HIV感染者の血漿からRNAを抽出しHIVのCTLエピトープ部分の塩基配列を決定した。(3) GFP遺伝子発現アデノウイルス(AdV)とセンダイウイルス(SeV)を作製し、樹状細胞への遺伝子導入効率を検討した。(4) HIV-1のGagとルシフェラーゼの融合蛋白質(Gag-luc)を酵母内で発現させ細胞壁を取り除いた。
結果と考察
(1) HIV感染者においてDNAチップを利用して遺伝子多型を網羅的に検討した結果、病態進行速度と関連する可能性の高い11箇所の候補遺伝子多型と、HIVプロテアーゼ阻害剤治療によるCD4陽性細胞数の回復速度の個人差と相関する可能性の高い7箇所の候補遺伝子多型を見出した。(2) 日本人の約60-70%がもつHLA-A24拘束性のHIVのCTLエピトープを解析したところ、複数個所について患者間で共通した変異を認めた。このことは、感染個体内でCTLエピトープへの選択圧が実際に働いていることを示唆する。(3) HIV特異的CTLを賦活化するための免疫遺伝子治療ベクターとしてSeVとAdVの樹状細胞に対する遺伝子導入効率を比較した結果、いずれのベクターも効率良く遺伝子導入が可能であった。(4) Gag-lucを酵母内で発現させ細胞壁を取り除いたところ、培養液中に効率良くルシフェラーゼ活性を含んだHIV様粒子が産生されることが明らかになり、酵母の遺伝子欠損ライブラリーの中からHIV様粒子産生能を失った株の選別を簡便に行うことが初めて可能になった。
結論
本研究により、HIVの病態進行や治療効果に関係する可能性の高い候補遺伝子多型が明らかになった。また、ワクチン開発において重要な因子である抗原と免疫方法に関する基礎的情報を得ることが出来た。また、酵母を利用して、HIV粒子形成に関わる新たな宿主因子同定のための実験手法が確立した。

公開日・更新日

公開日
2005-06-17
更新日
-