難治性の肝疾患に関する調査研究

文献情報

文献番号
200400824A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性の肝疾患に関する調査研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
戸田 剛太郎(東京慈恵会医科大学(内科学講座消化器・肝臓内科))
研究分担者(所属機関)
  • 藤原 研司(埼玉医科大学(消化器・肝臓内科))
  • 大西 三朗(高知大学医学部(消化器病態学))
  • 小俣 政男(東京大学大学院医学系研究科(器官病態内科学消化器内科学))
  • 中沼 安二(金沢大学大学院医学系研究科(がん細胞学形態機能病理学))
  • 幕内 雅敏(東京大学大学院医学系研究科(臓器病態外科学人工臓器・移植外科学))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
25,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
難治性の肝疾患のうち自己免疫性肝炎(AIH)、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、劇症肝炎(FH)の病因、病態の解明を通じて、新たな診断法、治療法を開発するとともに、診断基準、適切な治療を施すための基準を作成し、国民の福利、厚生に資することである。
研究方法
1) 全国調査:上記各疾患に関する実態把握 
2) 治療法:AIHに対するウルソデオキシコール酸(UDCA)、PBCに対するベザフィブラート(BF)、B型劇症肝炎に対するラミブジンの試験研究を行い、その有効性、有用性を明らかにする。
3) 病因解明、病態成立機序の解明に基づいた新しい診断法、治療法の開発:疾患モデルの確立を含む病態解析に関する研究遂行。
結果と考察
AIH:病態解明への寄与が期待できる新しいモデルマウスが示された。小児のAIH診断においてもInternational AIH groupの診断基準の有用性が明らかとなった。UDCA単独治療の有用性は明確でなかった。プロテインチップを用いた検討ではオーバーラップ症候群はいずれもPBCと判定され、診断に当たって留意する必要がある。小児AIHに対するメチルプレドニゾロンパルス療法併用の有用性が示された。
PBC:平成16年度から、PBCの診断基準を改定した。旧診断基準で黄疸、皮膚掻痒感がないために無症候性PBC とされた3,111例のなかに、新診断基準における症候性PBCに該当する症例が3%含まれ、予後が不良である事が報告された。また、新診断基準ではELISA法による抗M2抗体も抗ミトコンドリア抗体として診断基準に加えることした。BFの試験研究は臨床研究により、UDCAとBF併用療法の有用性が示された。
FH:2003年には94例(劇症肝炎急性型44例,亜急性型38例,LOHF 12例)が登録された。成因はウイルス性が50%を占め,その内訳ではB型(47%)が最多であった。自己免疫性例は全体の3%であり,2002年までに比して低率であった。肝移植実施例も含めた救命率は急性型55%,亜急性型45%,LOHF 17%であった。ラミブジン投与開始3年後までの成績より、有用性が示唆されつつある。新規治療法として自己骨髄細胞移植による肝再生療法が示された。
結論
疾患モデルおよびDNA、プロテインチップを用いた病因に関する知見が集積され、また、新たな治療法の妥当性についての証左が得られた。

公開日・更新日

公開日
2005-09-06
更新日
-

文献情報

文献番号
200400824B
報告書区分
総合
研究課題名
難治性の肝疾患に関する調査研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
戸田 剛太郎(東京慈恵会医科大学(内科学講座消化器・肝臓内科))
研究分担者(所属機関)
  • 藤原 研司(埼玉医科大学(消化器・肝臓内科))
  • 大西 三朗(高知大学医学部(消化器病態学))
  • 小俣 政男(東京大学大学院医学系研究科(器官病態内科学消化器内科学))
  • 中沼 安二(金沢大学大学院医学系研究科(がん細胞学形態機能病理学))
  • 幕内 雅敏(東京大学大学院医学系研究科(臓器病態外科学人工臓器・移植外科学))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
自己免疫性肝炎(AIH)、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、劇症肝炎(FH)および遅発性肝不全(LOHF)について、我が国における実態とその変遷、発症機序、診断法、肝移植を含めた治療指針、良好なQOLを得るための方策を明らかにし、国民の福祉向上に寄与することを目的とする。
研究方法
1) 全国調査:各疾患に関する実態把握 
2) 治療法:AIHに対するウルソデオキシコール酸(UDCA)、PBCに対するベザフィブラート(BF)、B型劇症肝炎に対するラミブジンの有効性、有用性を明らかにする。
3) 病因解明、新しい診断法、治療法の開発:疾患モデルの確立を含む病態解析に関する研究を継続する。
結果と考察
AIH:AIH、PBCそれぞれの診断確定のための判別式を作成し、わが国の自己免疫性肝疾患の多くは、PBC、あるいは自己免疫性肝炎の範疇に包含され、いわゆるOverlapや原因不明病態は少ないことを明らかにした。わが国においても小児症例の存在が明らかとなり、診断、治療には発達成長の勘案が必要であることから、小児症例に対する、診断・治療指針確立を進めている。原発性硬化性胆管炎(PSC)に対する全国調査を開始した。
PBC:第11回PBC全国調査により、総登録症例は5129例となった。無症候性PBC症例、掻痒感(+)黄疸(-)PBC症例、黄疸(+)PBCのうち軽度(T-Bil値2-5mg/dl、組織学的病期ⅠまたはⅡ)の症例では、1990年以降に診断された群は以前の群と比較して予後が有意に改善し、その要因としてUDCA投与の予後改善効果が明らかにされた。BF投与の有用性が試験研究により確認された。
FH、LOHF:従来の成因分類にAIH、E型肝炎ウイルスが新たに加わった。AIHがFH、LOHFに占める比率は平成13,14,15,16年度では、それぞれ11.6, 2, 9, 0%であった。肝移植実施例を含む救命率は急性型58%,亜急性型41%,LOHF 30%であり、生体部分肝移植による予後改善が明らかとなった。HBVキャリアの急性増悪例の救命率向上におけるラミブジンの有用性が確認された。
結論
AIH、PBCそれぞれ診断・治療面で大きな進歩が見られた。FHの成因別分類を作成し、成因診断のための基準を示し、治療法探索のための基礎を確立した。

公開日・更新日

公開日
2005-09-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2006-02-20
更新日
-