前庭機能異常に関する調査研究

文献情報

文献番号
200400819A
報告書区分
総括
研究課題名
前庭機能異常に関する調査研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 正紘(東海大学医学部(耳鼻咽喉科学教室))
研究分担者(所属機関)
  • 池園 哲郎(日本医科大学(耳鼻咽喉科学教室))
  • 伊藤 壽一(京都大学 医学部(耳鼻咽喉科学教室))
  • 久保 武(大阪大学 医学部(耳鼻咽喉科学教室))
  • 鈴木 衛(東京医科 大学(耳鼻咽喉科学教室))
  • 工田 昌也(広島大学 医学部(耳鼻咽喉科学教室))
  • 竹田 泰三(高知大学 医学部(耳鼻咽喉科学教室))
  • 武田 憲昭(徳島大学 医学部(耳鼻咽喉科学教室))
  • 山下 裕司(山口大学 医学部(耳鼻咽喉科学教室))
  • 渡辺 行雄(富山医科薬科大学 医学部(耳鼻咽喉科学教室))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
17,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1) メニエール病患者の生活習慣の特徴を明らかにする。2) メ病の疫学調査結果を過去と比較する。3) メ病患者でK+代謝やHSP関連遺伝子のSNPを調べる。4) 実験的内リンパ水腫でVP-AQP2系阻害の水腫治療効果を調べる。5) 抗酸化剤の内耳障害予防効果、ハイドロゲルの媒体機能を調べる。6) GM局所投与効果をメ病の中長期監察例で調べる。7) メ病研究の変遷をたどり研究の課題を分析する。
研究方法
1) メ病患者185名、低音障害型感音難聴144名と地域住民間で行動特性と日常生活の過ごし方を比較した。2) 特定地域と班員施設でメ病患者の有病率、罹患率その他を調査した。3) メ病確実例63名でKCNE1遺伝子、メ病と低音障害型難聴35名でHSPA1L遺伝子のSNPを調べた。4) ラットで塩化Liが実験的内リンパ水腫に与える影響を調べた。V2拮抗薬OPC-31260の全身投与と鼓室内投与の効果を比較した。5) ラット鼓室にPaExoAやAMPAの毒素を投与し、エダラボンの障害予防効果を比較した。ハイドロゲルの媒体徐放機能を調べた。6) 難治性メ病、遅発性内リンパ水腫でGM鼓室内投与の40例の成績を調べた。7) 厚労省研究班の年度別報告書と、過去54年間のメ病関連論文4,531編の年代推移を調べた。
結果と考察
1) メ病で特異な行動特性が確認され、低音障害型難聴とは異なっていた。自己を抑え周囲を意識して励むことに対する、周囲からの報酬(感謝や高い評価)不足がメ病発症要因と示唆された。2) メ病確実例で60歳以上の発症割合が増加していた。罹病率は不変であるが、有病率は以前より増加していた。3) KCNE1遺伝子とHSP70遺伝子のSNP割合が有意に多かった。4) VP-AQP2系阻害は内リンパ水腫を予防し改善させた。5) エダラボン局所投与は内耳障害を予防し無害であった。ハイドロゲルは徐放剤として優れていた。6) GM鼓室内投与はめまいを予防し聴力に影響しなかった。7) 病因研究は内耳に集中し、ストレスや社会医学的研究に乏しい。手術治療は減少し、GM局所投与に収束している。
結論
メ病は特異な行動習慣に起因するストレス病と示唆された。高齢発症患者の増加が確認された。内耳VP-AQP2系阻害は水腫治療に有効であった。抗酸化剤エダラボンの内耳投与は内耳障害を予防した。メ病の早期は生活指導、頑固なめまいにはGM局所投与が望ましい。抗酸化剤の局所投与治療の臨床応用が待たれる。

公開日・更新日

公開日
2005-04-28
更新日
-

文献情報

文献番号
200400819B
報告書区分
総合
研究課題名
前庭機能異常に関する調査研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 正紘(東海大学医学部(耳鼻咽喉科学教室))
研究分担者(所属機関)
  • 池園 哲郎(日本医科大学 (耳鼻咽喉科学教室))
  • 伊藤 壽一(京都大学 医学部(耳鼻咽喉科学教室))
  • 久保 武(大阪大学 医学部(耳鼻咽喉科学教室))
  • 鈴木 衛(東京医科大学 (耳鼻咽喉科学教室))
  • 工田 昌也(広島大学 医学部(耳鼻咽喉科学教室))
  • 竹田 泰三(高知大学 医学部(耳鼻咽喉科学教室))
  • 武田 憲昭(徳島大学 医学部(耳鼻咽喉科学教室))
  • 山下 裕司(山口大学 医学部(耳鼻咽喉科学教室))
  • 渡辺 行雄(富山医科薬科大学 (耳鼻咽喉科学教室))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
メニエール病をストレスの心身反応による水腫生成ととらえ、次の項目を研究した。1) 疫学調査、2) メ病患者の生活の特異性、3) ストレス客観化と水腫形成との関わり、4) 内耳水代謝機構を利用した水腫予防と治療、5) 局所薬剤投与、再生医学による内耳障害の予防と治療。ストレスの客観化や水腫形成との関わりは解明できなかったが、その他の項目で成果を上げることができた。
研究方法
1) 特定地域と班員施設でメ病の疫学調査を実施した。2) メ病、低音障害型感音難聴患者と地域住民で行動特性を比較した。患者群で難聴の進行、ストレス関与、発症増悪要因、苦痛度を調査した。3) メ病確実例でKCNE1遺伝子、メ病と低音障害型難聴でHSPA1L遺伝子のSNPを調べた。メ病患者でDNAマイクロアレイによりストレス関連遺伝子の発現を調べた4) 内耳でAQP2のV2リセプターを確認し、VP-AQP2系阻害が実験的内リンパ水腫に与える影響を調べた。5) in vitroとin vivoで内耳障害(アミノグリコシド、PaExoA、AMPA)に対するアポトーシス関連酵素の阻害、抗酸化剤、HSP誘導の効果を調べた。神経幹細胞の内耳移植により、再生医療の可能性を調べた。ハイドロゲルの媒体徐放機能を調べた。
結果と考察
罹病率は不変、有病率は増加傾向にあり、高齢発症の割合が増加していた。メ病患者で著しい自己抑制と熱中行動、一部の攻撃行動(勝気、イライラしやすい)が裏づけられた。勤労や配慮に対する周囲からの報酬(感謝、評価)不足が発症要因と示唆された。ストレス関連遺伝子SNPやDNAマイクロアレイの関連遺伝子の発現が観察された。内耳水代謝にVP-QP2系が関わること、塩化LiやOPCによるこの系の阻害は水腫を予防し改善させた。In vitro、in vivoともにアポトーシス阻害や抗酸化剤が内耳障害予防に有効であった。媒体ハイドロゲルでエダラボンを正円窓投与する方法が優れていた。移植された神経幹細胞移植はグリアに分化し、再生医療には大きな壁があった。
結論
メ病患者に特異な行動習慣(自己抑制、熱中、勝気)が判明し、生活習慣病の可能性が高まった。リスクファクターを明らかにし、再発予防の広報活動が重要である。ストレスや情動と水腫生成との関わりは今後の研究課題である。水腫生成の局所要因は不明であるが、内耳水代謝系の阻害薬や抗酸化薬エダラボンの経正円窓投与は、水腫予防や内耳障害の進行予防策として急速に現実味が増した。産学協同研究による臨床応用が課題である。

公開日・更新日

公開日
2005-04-28
更新日
-