特発性拡張型心筋症の原因解明に関する臨床研究

文献情報

文献番号
200400798A
報告書区分
総括
研究課題名
特発性拡張型心筋症の原因解明に関する臨床研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
小室 一成(千葉大学大学院医学研究院循環病態医科学)
研究分担者(所属機関)
  • 須磨 久善(葉山ハートセンター)
  • 油谷 浩幸(東京大学国際産学共同センターゲノム科学機能ゲノミクス)
  • 寺崎 文生(大阪医科大学第三内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
47,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国では心臓移植の申請者としては拡張型心筋症が最も多く、その原因解明は極めて重要である。一部の拡張型心筋症の症例では原因遺伝子が判明したものの、大部分は原因不明であり、また遺伝子の判明している場合でもその変異により収縮不全をきたす機序は不明である。そこで本研究では、拡張型心筋症の原因遺伝子を解析しその病態生理を解明することを目的とする。
研究方法
バチスタ手術の際に得られたヒト拡張型心筋症の心筋を用いてDNA chipにより遺伝子発現を網羅的に解析し、さらにその発現の変化している遺伝子の改変マウスを作成し、心機能不全発症における意義を明らかにする。
結果と考察
申請者らは、DNA chipによって得られた結果に基づき、平成15年度までには、不全心で発現の低下していた遺伝子である心筋特異的転写因子Csx/Nkx2.5、増殖因子受容体EFGR、熱ショック制御因子HSF-1についてマウスモデルを作成して検討し、それらが心不全病態生理に重要であることを示唆した。平成16年度には新たに油谷らが同定した不全心で発現亢進のみられる遺伝子群である酸化酵素12-lipoxygenaseや自己貪食関連遺伝子についてのマウスモデルの作成・解析を行い、それらの心不全増悪因子としての意義を示唆するデータを得ている。寺崎らは、心筋細胞変性・細胞死に対する自己貪食やユビキチン-プロテアソーム系などのタンパク質分解系の関与について解析を進め、それらの亢進に心筋内の酸化タンパクの集積が重要であることを明らかにした。また須磨らは平成15年度には、炎症性サイトカインの発現亢進と抗炎症性サイトカインの発現低下が特発性拡張型心筋症の予後不良因子であることを確認していたが、平成16年度にはその原因のひとつとしてcoxsackie B virusの持続性感染の関与を示唆した。寺崎らのデータや須磨らのデータはDNA chipやマウスの解析で得られた結果、特に不全心で発現亢進のみられる遺伝子群である12-lipoxygenaseや自己貪食関連遺伝子と密接に関連している可能性が示唆された。
結論
以上のようなマウスモデルの確立・解析をさらに進めることにより拡張型心筋症ばかりでなく、心不全発症の分子機序が明らかになる可能性がある。また作成した遺伝子改変マウスは、拡張型心筋症モデルとして創薬にも大変有用である。

公開日・更新日

公開日
2005-08-04
更新日
-