ナンセンス変異型筋ジストロフィーのリードスルー薬物による治療法の確立

文献情報

文献番号
200400782A
報告書区分
総括
研究課題名
ナンセンス変異型筋ジストロフィーのリードスルー薬物による治療法の確立
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
松田 良一(東京大学大学院総合文化研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 池田大四郎((財)微生物化学研究会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
9,482,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 点突然変異により生じた未熟終止コドンを薬物により読み越え【リードスルー】させ,転写の正常な終点まで翻訳を続けさせることができれば,筋ジストロフィーの15%程度を占めるナンセンス変異症例を治療できる。このような薬物の開発にはリードスルー活性を定量化することが必要である。申請者らは,未承認抗菌性物質ネガマイシンがmdxマウス筋組織内でリードスルー活性を示し,ナンセンス変異を原因とする筋ジストロフィーであるデュシャンヌ型筋ジストロフィーの治療に有効であることを示してきた。本研究では、リードスルー活性測定用のバイオアッセイ系の作成とそれを応用した薬物の開発を目的とする。さらにネガマイシンの立体配位形成に適合する化合物のin silico検索もおこなう。
研究方法
 本研究では,㈰ネガマイシンをリード物質とした最適化と㈪微生物化学研究会が所蔵する未承認を含む抗菌性物質群とin silicoスクリーニングで得られたネガマイシン関連物質のリードスルー活性の網羅的探索を行う。生体内・外での薬効評価を効率化するため独自に開発したリードスルー活性検出系として,デュアルレポーター遺伝子を組み込んだトランスジェニック(Tg)マウスと細胞株を用いる。Tgマウスの筋組織・その他各組織について,画像解析技術や分子生物学的手法を駆使してリードスルー活性を測定する。全身を測定することにより,抗菌性物質の臓器/組織特異性や毒性の把握が明確となり,三次元データ解析により105万種以上の化合物からネガマイシンの立体配位形成に適合する化合物の検索を行う。
結果と考察
 デュアルレポーター遺伝子を組み込んだTgマウスの作成に成功した。これらTgマウスを用いることで,初めて生体内でのリードスルー活性測定が可能となり,ゲンタマイシンによる各組織別リードスルー効率を評価した。また,上記コンストラクトを導入したマウス筋細胞株C2C12とリアルタイムルミノメータを用いることでルシフェラーゼ活性の経時的測定が可能となった。さらに,三次元データ解析により105万種以上の化合物からネガマイシンの立体配位形成に適合する19種の類似物質を特定し入手した。
結論
 リードスルー活性のアッセイ系としてTgマウス系統を確立できた。この系を薬物の投与法、投与量、投与ルートの最適化、新しいリードスルー薬物の検索に応用することで、今後のナンセンス変異型遺伝子病治療薬研究の進展が期待される。


公開日・更新日

公開日
2005-11-10
更新日
-