軸索傷害型ギラン・バレー症候群の抗神経毒素療法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200400781A
報告書区分
総括
研究課題名
軸索傷害型ギラン・バレー症候群の抗神経毒素療法の開発に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
吉良 潤一(九州大学大学院医学研究院神経内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 西村 泰治(熊本大学 大学院医学研究科 免疫識別学)
  • 鍋倉 淳一(岡崎国立共同研究機構生理学研究所 発達生理学研究系 生体恒常機能発達機構部門)
  • 水之江 義充(九州大学 大学院医学研究院 細菌学)
  • 平田 和穂(九州大学 大学院医学研究院 形態解析学)
  • 三野原 元澄(九州大学 大学院医学研究院 神経内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、我々の研究グループでは、ギラン・バレー症候群(GBS)の先行感染病原体であるCampylobacter jejuni(C. jejuni)より、DNA-binding protein from starved cells(C-Dps蛋白)を初めてクローニングした。GBS病態とC-Dps蛋白との関連の検討を行い、これまでに以下の結果を得ている。1)本蛋白に対する抗体は、C. jejuni感染後GBS患者で約50%の陽性率である、2)C-Dps蛋白はラットの脊髄前角の運動ニューロンと末梢神経の髄鞘に結合する、3)C-Dps蛋白はsulfatideと結合する、4)C-Dps蛋白は、ニューロンに分化したPC12細胞株に対し、濃度依存性に細胞膜を障害する。これらのin vitroでの結果は、C-Dps蛋白がsulfatideを介して神経細胞に結合し、直接的に神経細胞を傷害しうることを示している。本年度は、in vivoにおけるC-Dps蛋白の作用を検討した。
研究方法
深麻酔下のラットの坐骨神経を露出し、C-Dps蛋白(n=5)、コントロールとして熱処理後(100度、30分)C-Dps蛋白(n=5)、PBS(n=5)の神経内注入を行い、電気生理学的検討、免疫染色を行った。
結果と考察
C-Dps蛋白を注入したラット坐骨神経では、複合筋活動電位(cMAP)が注入後10分より有意に低下した。同量のPBS、あるいは熱処理後(100度、30分)C-Dps蛋白を注入した坐骨神経では、cMAPの低下は認められなかった。神経伝導速度に関しては、3群間で有意な変化は認められなかった。つまり、C-Dps蛋白はin vivoにおいて末梢神経に伝導ブロックを誘導することが示された。C-Dps蛋白を注入した坐骨神経を抗C-Dpsモノクローナル抗体で免疫染色した場合、髄鞘やランビエ絞輪部へのC-Dps蛋白の沈着が認められたことから、ランビエ絞輪部での傷害が示唆される。C-Dps蛋白の受容体であるsulfatideは、ランビエ絞輪周辺のイオンチャンネルの局在に関与する。現在、イオンチャンネルの免疫染色等を行い、C-Dps蛋白による伝導ブロックのメカニズムの解明を行っている。
結論
C-Dps蛋白は、in vivoにおいて、ラット坐骨神経のランビエ絞輪部に結合し伝導ブロックを誘導する。

公開日・更新日

公開日
2005-04-28
更新日
-