糖鎖修飾異常による遺伝性筋疾患の病態解明と治療法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200400776A
報告書区分
総括
研究課題名
糖鎖修飾異常による遺伝性筋疾患の病態解明と治療法の開発に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
西野 一三(国立精神・神経センター神経研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 林 由起子(国立精神・神経センター神経研究所)
  • 野口 悟(国立精神・神経センター神経研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
筋細胞膜タンパク質α-ジストログリカン(αDG)の糖鎖修飾不全を原因とするα-ジストログリカノパチー(αDGP)とシアル酸合成酵素遺伝子の異常を原因とする縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー(DMRV)の病態解明と治療法開発。
研究方法
α-ジストログリカン異常を認める先天性筋ジストロフィー患者96例について、αDGP関連分子の遺伝子変異検索を行った。αDGP関連分子の特異抗体を作製し、各種免疫染色を行った。DMRVに関しては、変異GNE蛋白質の酵素活性測定、培養細胞及び患者組織でのシアリル化状態の評価を行った。
結果と考察
α-ジストログリカン異常を認める先天性筋ジストロフィー患者96例の内、フクチン遺伝子の3-kb挿入変異をホモ接合体で有するのは43例、ヘテロ接合体で有するのは14例であった。ヘテロ接合体例では、フクチン遺伝子の翻訳領域に新規変異を含む7つの変異を見出した。さらに、フクチン遺伝子に変異を認めなかった例の中から、FKRPとPOMT1の遺伝子変異を検索し、アジアで初めてのFKRP変異例を見出した。
αDGP関連分子の細胞内局在を独自に作製した特異抗体を用いて明らかにした。フクチンはLarge、POMGnT1とともに複合体を形成して、シスゴルジに共局在していること、また、フクチンはGlcNAc転移機能を担っていることを示した。このモデルは各αDGPの臨床的類似性とαDG分子の糖鎖不全の程度を充分説明するものである。さらに、このことは原因遺伝子の同定されていないαDGP筋において、未知の原因遺伝子が存在しうる可能性をも示唆している。
DMRVに関しては、変異GNE蛋白質の酵素活性を測定し、すべての変異で酵素活性が著しく減少していることを示すとともに、DMRV筋では萎縮筋局所的にシアリル化の低下とそれに伴う糖鎖異常がおこっていることを見出した。この事実は、DMRVがGNE遺伝子機能喪失変異によって低シアリル化を来して発症することを示している。
結論
本邦αDGP患者の大半は、フクチン遺伝子変異によるものであるが、FKRP遺伝子変異による例もある。αDGP関連分子の内、フクチン、Large、POMGnT1はシスゴルジにおいて複合体を形成し、この複合体自体にGlcNAc転移機能がある。DMRVは、GNE遺伝子機能喪失変異によって低シアリル化を来して発症する。

公開日・更新日

公開日
2005-04-20
更新日
-