自殺企図の実態と予防介入に関する研究

文献情報

文献番号
200400767A
報告書区分
総括
研究課題名
自殺企図の実態と予防介入に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
保坂 隆(東海大学医学部 )
研究分担者(所属機関)
  • 人見佳枝(近畿大学医学部)
  • 伊藤敬雄(日本医科大学)
  • 酒井明夫(岩手医科大学)
  • 黒木宣夫(東邦大学医学部)
  • 増子博文(福島県立医科大学)
  • 町田いづみ(東京福祉大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
(1)三次救急施設に搬送された自殺企図患者の詳細な背景と,DSM診断基準に基づく精神疾患を明らかにする。
(2)自殺既遂例と未遂例を比較して,既遂例の特徴を明らかにする。
(3)それにより自殺予防方法などを提案していく。
研究方法
(対象と方法)平成15年8月から平成16年12月までの間に,岩手医科大学付属病院・近畿大学医学部付属病院・日本医科大学付属多摩永山病院・の3施設の救命救急センターに搬送されたすべての自殺企図患者を対象とし,各施設の精神科医が共通のケースカードを使用して評価を行い,データを集積する。
結果と考察
(結果)三次医療施設の救命救急センター3カ所で,共通したケースカードを用いて自殺企図者のケースを集積しその背景因子などを分析した。本年度は722例が集積され,そのうち80例の既遂例があったために,自殺による死亡の予防を考える目的で,未遂例に対した既遂例の特徴を明らかにした。それによれば,未遂例に対した既遂例の特徴は,①男性であること,②高齢であること,③精神科の既往・通院歴がないこと,④精神疾患の家族歴がないこと,⑤初回の自殺企図であること,⑥事前に周囲に相談していないこと,⑦短期間でのストレスは(未遂例と比べて)少ないこと,⑧企図時に飲酒していないこと,⑨うつ病であること,⑩手段が飛び降り・飛び込み・縊頸であること,⑪希死念慮が強いこと,などであった。
(考察)本研究では,救命救急センターに搬送された既遂者の特徴を明らかにして予防対策を考える目的と,未遂者への直接的な介入によって自殺再企図・既遂を減らすことを目的としている。まず第一の目的としては,既遂者の特徴を明らかにできたので,このような研究で得られた項目に対して介入を行うことによって,自殺者を減らすことが期待できると思われた。第二の目的のためには,未遂者の企図後の受療行動の分析や,フォローアップ研究が必要になる。今後も症例の集積と,フォローアップ研究が必要である。
結論
三次医療施設の救命救急センター3カ所で,共通したケースカードを用いて自殺企図者のケースを集積しその背景因子などを分析した。本年度は722例が集積され,そのうち80例の既遂例があったために,自殺による死亡の予防を考える目的で,未遂例に対した既遂例の特徴を明らかにした。最も気になった点は,諸外国の報告に比べて,自殺企図者が企図前に周囲の人間,特に医療機関を受診することは非常に少ないということであった。研修医や実地医家への卒後研修の重要性は前提としながらも,うつ病や自殺についての啓蒙,すなわち一次予防的な介入がこれまで以上に必要であると思われた。

公開日・更新日

公開日
2005-04-21
更新日
-