重症ストレス障害の精神的影響並びに急性期の治療介入に関する追跡研究

文献情報

文献番号
200400761A
報告書区分
総括
研究課題名
重症ストレス障害の精神的影響並びに急性期の治療介入に関する追跡研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
金 吉晴(国立精神・神経センター精神保健研究所 成人精神保健部)
研究分担者(所属機関)
  • 辺見 弘(独立行政法人国立病院機構災害医療センター)
  • 奥山 眞紀子(国立成育医療センター)
  • 内富 庸介(国立がんセンター研究所支所)
  • 石束 嘉和(東京都多摩老人医療センター)
  • 橋本 謙二(千葉大学社会精神保健教育研究センター)
  • 森田 展彰(国立大学法人筑波大学大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
目的:(1)追跡研究としては、事故等による、重症ストレス反応の実態と経過、それに関連する諸要因の変動を、ナショナルセンター等の共同研究によって、対象者のライフステージごとに明らかにすると共に、最先端のバイオメディカル技術として、脳の海馬、扁桃体、帯状回などの体積測定、また事故に関連した刺激を用いた機能的脳画像所見(fMRI)などの指標を用い、重症ストレス障害の客観的所見を明らかにする。
(2)さらに、事故後の重症ストレス反応に関する予防的治療法として、急性期のparoxetine投与、亜急性期の認知行動療法のそれぞれについて、無作為比較試験(Randomized controlled trial)によってその効果を検証する。
研究方法
初年度には各センターにおける患者登録システムを構築する。下記研究1の対象患者のスクリーニングと登録、研究同意、初回面接、追跡方法の確立を行う。
研究1:急性期のトラウマ反応の実態と回復過程  初年度から3年度
各施設ごとに対象患者の年代と原因となる出来事を揃え、重症ストレス障害を中心とする精神的反応の発生と経過、それらに影響を与える心理社会的要因を検討する。
結果と考察
①交通事故調査での事故後1ヶ月時点での精神疾患は事故後1ヶ月時点の精神疾患有病率が40.6%となったが,今後の追跡調査によって先行研究との異同が明らかになると考えられる。
②がんの告知研究では本調査時において,本研究の結果,侵入性想起との関連が示唆されたのは神経質,姻族でのがん経験者数,がん罹患前の侵入性想起,放射線治療の有無の4つの因子であり,生物学,心理学,社会学と多次元の要因にわたっていた。神経質とがん生存者におけるPTSD症状の関連は先行研究においても報告されている。
本研究では神経質の評価はがん診断後であるため,今回認められた関連は先行研究の結果を支持するものである。血族ではなく,姻族でのがん経験者数と関連が示唆されたことは予想外のことであった。これには日本の文化的特徴を反映する社会的束縛が関与している可能性がある。
結論
①交通事故後のPTSDの発症率は日本では諸外国の報告を下回っており,これは一般人口中の有病率も日本では低く報告されていることと符合するが,より詳しくは今後の調査の結果を待たなくてはならない。
②がんに関連した侵入性想起には生物学的因子,心理学的因子,社会学的因子のそれぞれが関連することが示唆され,侵入性想起の病態解明には多面的アプローチが必要であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2005-05-24
更新日
-