アスペルガー症候群の成因とその教育・療育的対応に関する研究

文献情報

文献番号
200400760A
報告書区分
総括
研究課題名
アスペルガー症候群の成因とその教育・療育的対応に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
森 則夫(浜松医科大学精神神経医学講座)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
16,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アスペルガー症候群や高機能自閉症は、発達療育機関,教育機関,医療現場でみすごされ,援助を受けることが難しい。アスペルガー症候群の原因の究明や治療の確立が必要なことは言うまでもないが、実際には、十分な生物学的研究は行なわれていない。そこで、我々は、家族会、療育機関、教育機関、医療機関、研究機関が協力、連合して、病因解明を目指した研究を行い、アスペルガー症候群や高機能自閉症の方々の教育や療育の手助けとする。
研究方法
① アスペ・エルデの会 (アスペルガー症候群の方々の家族会。) と相談しながら、MRI (磁気共鳴画像) とPET (ポジトロンCT) を用いた画像研究を行い、② そこで得られる脳の機能形態学的異常の原因を探るとともに ③ 脳の機能形態学的異常は生体環境にどのような生物学的変化をもたらしているかを探る。さらに、④ 臨床症状、認知機能の評価を行い、⑤これらの所見を統合して、アスペルガー症候群の成因を明らかにし、⑥ 彼らの治療法、教育・療育的対応に関する根拠となる研究を行う。
結果と考察
高機能自閉症では,大脳皮質全般,基底核,中脳,小脳に渡る広範囲の部位でセロトニントランスポーターが有意に低下していた。視床のセロトニントランスポーターの低下が強迫症状の強度と有意な相関が認められた。MRIと母子手帳の解析から、高機能自閉症患児は,子宮内発育遅延を反映する身体発達指標に異常がみられ,それが臨床症状(重症度)や脳容積の異常と関連する傾向が認められた。高機能広汎性発達障害の方は年齢が上がるにつれて感情障害の併存が多くなることが示された。高機能広汎性発達障害児者の対人関係能力は同じ年齢において、低い発達レベルの対人交渉方略モデルを使用していることがわかった。高機能広汎性発達障害児は、35%と高率に構音障害がみられた。高機能広汎性発達障害児を同胞について個別的なフォローを視野に入れた支援を模索していくことの必要性が指摘された。アスペルガー症候群の母親には抑うつ状態を呈する方が多かった。リラクセーション法は母親のネガティブな気分状態を緩和する効果があった。ヒスチジン血症における広汎性発達障害の発生頻度が、一般集団に比べて著しく高いことが明らかになった。
結論
我々は、アスペルガー症候群, 高機能自閉症の脳内で、セロトニン・トランスポーターが低下と強迫症状との相関を始めてみいだすなど、自閉症スペクトラムの病態解明、本人や家族に対する、支援につながるような新しい知見を得た。今後、薬物療法と療育を絡めた、新たな治療法の開発をしていきたい。

公開日・更新日

公開日
2005-06-29
更新日
-