統合失調症の基本障害に基づいた診断装置の実用化

文献情報

文献番号
200400758A
報告書区分
総括
研究課題名
統合失調症の基本障害に基づいた診断装置の実用化
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
小島 卓也(日本大学医学部精神神経科学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 川原隆造(鳥取大学医学部精神行動医学分野)
  • 倉知正佳(富山医科薬科大学精神医学教室)
  • 松島英介(東京医科歯科大学大学院心療・緩和医療学分野)
  • 前田久雄(久留米大学医学部神経精神医学講座)
  • 大久保善朗(日本医科大学精神医学教室)
  • 林 拓二(京都大学医学部精神医学教室)
  • 平安良雄(横浜市立大学医学部精神医学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
統合失調症の診断では、成因的な所見(遺伝因、素因、環境因)や症状の基盤にある基本障害あるいは認知機能障害などについては考慮されておらず、これらを考慮した客観的診断方法が望まれる。このために1)高い判別率を有し、2)臨床および精神病理学的成果を反映し、3)中枢神経回路網の特有な形態的・機能的異常と相関し、4)臨床遺伝学的および分子遺伝学的基盤を備えた心理・生物学的マーカーを用いた診断装置が必要である。本研究では以上のような特性を持つ探索眼球運動を用いた統合失調症診断装置を開発し、実用化に向けてデータベースを作成し、普及型装置を完成させる。
研究方法
1)探索眼球運動を用いた統合失調症診断装置のデータベースの作成
施設ごとに統合失調症、気分障害、健常者各20名およびその他の疾患について記録・診断し、DSM-IV診断、臨床情報を整理し、データベースを作成する。
2)診断装置の妥当性の検討: 本装置による全症例の診断結果とDSM-IV診断との関係、臨床情報との関係を調べ、本診断システムの有用性と限界についてまとめる。
3) 普及型の統合失調症診断装置の完成と医療機器としての申請 
普及型の装置と装備するデータベースを完成させ、医療機器として申請する。
結果と考察
多用途の統合失調症診断装置2台(12月下旬)、臨床応用に限定した普及型2台(3月中旬)を作成し、分担研究者に配置した。統合失調症患者96名、気分障害患者29名、健常対照者55名を対象に本装置で探索眼球運動の自動測定・解析および診断を行った。統合失調症を統合失調症と判別した判別率(感受性)は73%、非統合失調症を非統合失調症と判別した判別率(特異性)は77.4%であり、気分障害は72.4%、健常対照者は80.0%であり、臨床応用可能と判定した。普及型装置の操作性、機動性も十分であった。反応的探索スコア(RSS)類似課題時の脳代謝をfMRIで記録し、健常者では両側視床と左内側前頭葉が賦活されたが、統合失調書では右前帯状回のみで視床の賦活はなく、回路網の形成が不十分であった。統合失調症及び探索眼球運動が測定されている家系を用い、関連研究を行い、6番染色体GRIK2遺伝子において関連が示唆された。
結論
自動診断装置を完成し、73.0%の感受性と77.4%の特異性で判別し、これまでと同様の結果を得て臨床応用可能と考えた。

公開日・更新日

公開日
2005-04-28
更新日
-