DNAチップを用いたうつ病の診断と病態解析

文献情報

文献番号
200400757A
報告書区分
総括
研究課題名
DNAチップを用いたうつ病の診断と病態解析
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
大森 哲郎(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 原田誠一(国立精神・神経センター武蔵病院)
  • 橋本亮太(国立精神・神経センター神経研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
神経伝達物質、サイトカイン、ホルモン、熱タンパク質などと関連する遺伝子1500種のmRNAの発現量を、白血球を試料として一括解析するDNAチップを開発した。心理的ストレスにさらされると、特定の遺伝子発現が増減し、翌日には回復することを見出し、ストレスに鋭敏に反応する測定系となることを確認している。このDNAチップを用いて白血球中のmRNA発現量を解析し、うつ病の診断と病態解析へ応用することを目的として本研究を行った。
研究方法
平成16年度の解析対象は徳島大学病院を受診した単極性うつ病患者である。うつ病の診断はDSM-IVに従い、ハミルトン評価尺度で重症度を評価した。血液5mlを採取し、キアゲン社製mRNA抽出用試験管を用いてmRNAを抽出した。抽出したmRNAの増幅と蛍光ラベルを行い、DNAチップを用いて1500種類の遺伝子のmRNAの発現量を解析し、クラスター解析を行った。血液からのmRNAの抽出は徳島大学医学部ストレス制御医学分野で行い、DNAチップの解析は、日立ライフサイエンスセンタ-に委託して行っている。測定のCV値は20%以下であり、信頼性と再現性は良好である。
結果と考察
120検体以上のうつ病患者血液を採取し、臨床データをデータベース化している。このうち身体的精神科的合併症のない当該病相未治療の単極性うつ病32例を、性年齢のマッチした身体疾患のない非喫煙者を対照として解析した。1)うつ病において、全例にほぼ共通して変化している遺伝子が約20種見出された。2)同時に、うつ病の半数でのみ変化している遺伝子群も約60種存在するため、うつ病が2群に分かれた。この2群間の性別、年齢、症状、ハミルトン評価点などには差異がなく、両群を分ける臨床指標は現在のところ明らかではない。3)全例にほぼ共通して変化している遺伝子は症状改善後に一定の変化を示さない。うつ病の半数で変化している遺伝子群の半数は、正常方向へ有意な反転を示した。4)これらの所見は疾患特異的であり、心理的ストレスのさいの変化とはほとんど重なりがなく、統合失調症との重なりも少ない。
結論
 以上の所見は、mRNAの発現パターンを指標として、うつ病を健康成人および精神科他疾患から識別できること、および治療経過にそった変化が捉えられることを意味している。日米の特許を申請している。現在双極うつ病、パニック障害などについても検討を進めている。うつ病マーカーとして臨床応用可能な実用型チップの開発とDNAチップのうつ病病態解析への応用に向けて研究を継続している。

公開日・更新日

公開日
2005-04-28
更新日
-