自閉症の病態診断・治療体制構築のための総合的研究

文献情報

文献番号
200400756A
報告書区分
総括
研究課題名
自閉症の病態診断・治療体制構築のための総合的研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
加我 牧子(国立精神・神経センター精神保健研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 稲垣真澄(国立精神・神経センター精神保健研究所)
  • 大野耕策(鳥取大学医学部脳神経小児科)
  • 杉江秀夫(浜松市発達医療センター)
  • 橋本俊顕(鳴門教育大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
自閉症の本態・病因・病態解明をはかり、治療に結びつける方策を検討する。
研究方法
1)認知機能の研究 自閉症では従来から前頭葉機能障害が指摘されている。このため前頭葉機能、特に視空間ワーキングメモリー(VWM)を検討するため、数字と平仮名を用いる小児用Advanced Trail Making Test(ATMT)を作成する。小児用ATMTによりVWMの利用率やエラーパターンを健常児と比較する。ATMTの責任領域が前頭葉であるかどうか近赤外線分光法(NIRS)により検討する。さらに自閉症の早期診断のため、乳幼児を対象とした行動チェックリストを作成しその有効性を検討する。
2)関連遺伝子に関する研究
自閉症合併率の高い結節性硬化症遺伝子TSC1、TSC2変異率と臨床症状発現を比較する。FMR-1出現頻度から脆弱X症候群の発生率を推定する。さらに自閉症におけるセロトニントランスポーター関連遺伝子の5-HT2AR遺伝子の102T/C多型を検索し、周生期因子の関係の有無を検討する。
3)行動異常・睡眠異常に関する研究
自閉症児に見られる頑固な睡眠異常の治療法開発のため、周囲への無関心、回転性行動異常を示す先天性難聴マウスBronx waltzer (bV)の活動性の日内変動を測定し脳内神経伝達物質の関連を検討する。Bvに特徴的なサーカデイアンリズムと行動パターンから自閉症のモデル動物としての意義を評価する。
結果と考察
1)小児用ATMTは自閉症児への適用が可能であり、自閉症児では、健常児と比べてWM利用率が低かったが、健常児と異なり数字よりも平仮名ATMTで反応時間が速く、VWM利用率が高い傾向がみられた。これより自閉症児では数字や平仮名の情報処理機構とその発達が健常児と異なっている可能性が示された。健常成人のATMT施行時には前頭葉が賦活されることが示唆された。作成したチェックリストは早期診断と予後判定に有意義であった。
2)結節性硬化症ではTSC2変異が重度の脳障害をおこした。脆弱X症候群の発生頻度は欧米より相当低いと考えられた。自閉症ではFRAXAはTTが多く、TTでは新生児異常も高頻度であった。
3)bv寡動群はサーカデイアンリズム障害が著しく、セロトニン神経系の機能障害が考えられ自閉症睡眠異常モデルとして評価できると考えた。
結論
自閉症児の認知機能、遺伝学的知見、睡眠異常の解明につながる所見を見いだすことができた。

公開日・更新日

公開日
2005-04-28
更新日
-