神経変性疾患の根本的治療の実現をめざした新規モデル動物での先端的治療法の開発と確立

文献情報

文献番号
200400755A
報告書区分
総括
研究課題名
神経変性疾患の根本的治療の実現をめざした新規モデル動物での先端的治療法の開発と確立
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
和田 圭司(国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第4部)
研究分担者(所属機関)
  • 北條 浩彦(国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第7部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
38,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
神経変性疾患(パーキンソン病とハンチントン病など)の根本的治療法(標的分子特異的発現制御法、神経機能不全修復法、神経再生療法)を動物モデルを用いて開発し確立する。
研究方法
(1)パーキンソン病: UCH-L1発現トランスジェニックマウスを行動科学的、病理組織学的に解析する。(2)ハンチントン病: モデルマウスに原因遺伝子特異的なsiRNAを投与しその効果を判定する。 (3)神経幹細胞:胎仔終脳由来神経上皮細胞に発現するGPCRの増殖、分化、運動、接着における作用を解析する。(倫理面への配慮)動物を使用する研究計画はすべて国立精神・神経センター神経研究所動物実験倫理問題検討委員会で審議され承認を受けた。
結果と考察
(1)パーキンソン病: I93M UCH-L1発現マウスではUCH-L1の凝集性が中脳特異的に高まっていることを見出した。 (2)ハンチントン病:ハンチントン病原因遺伝子であるhuntingtinに特異的なsiRNAを開発し、生直後のマウス脳内に直接投与することでその治療効果を確認した。siRNAを脳内投与されたモデルマウスは対照に比べ発症時期が遅れ、延命するなど臨床的に進行が遅くなり、病理学的にも神経細胞死が抑制されhuntingtin陽性の凝集体の形成が少なくなった。 (3)神経幹細胞:神経幹細胞に最も高発現するG蛋白質共役型受容体の一つとしてエンドセリンB受容体を同定した。リガンドであるエンドセリンの添加により神経幹細胞はその運動性、接着性が高まった。
今年度当該モデルマウスを用いてI93M UCH-L1の凝集性が中脳特異的に高まっていることを見出したことで黒質ドーパミンニューロンの脆弱性の全容解明が展開できるようになった。またハンチントン病モデルマウスの結果からgain of toxicityで発症する神経変性疾患の根本治療にRNAi法は極めて有望であることが示された。神経幹細胞に関して今回得られた結果はGPCRを利用した神経幹細胞・神経前駆細胞の増殖・分化制御系を開発する上で有用であった。
結論
ハンチントン病原因遺伝子に対するsiRNAを開発し、モデル動物個体においてその効果を確認した。新規パーキンソン病モデルマウスを開発しUCH-L1の凝集性がin vivoでも高まっていることを見出した。神経幹細胞の運動性・接着性を制御するG蛋白質共役型受容体リガンドを同定した。

公開日・更新日

公開日
2005-04-21
更新日
-