免疫抑制性ネットワークを介した炎症性神経疾患の 画期的な治療法開発に関する研究

文献情報

文献番号
200400754A
報告書区分
総括
研究課題名
免疫抑制性ネットワークを介した炎症性神経疾患の 画期的な治療法開発に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
山村 隆(国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第六部)
研究分担者(所属機関)
  • 三宅 幸子(国立精神・神経センター神経研究所免疫研究部)
  • 佐藤 準一(国立精神・神経センター神経研究所免疫研究部)
  • 神田 隆(東京医科歯科大学医学部大学院脳神経病態学)
  • 島村 道夫(三菱化成生命科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
28,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
炎症制御機構に関する基礎研究を推進し、その成果に基づいた、免疫性神経疾患の治療法を開発することを目的とした。研究対象として、炎症制御にかかわる新しい調節性T細胞(MR1分子拘束性V alpha 19-J alpha33 T細胞; 以下、「第二のNKT細胞」と略。)、自己免疫を抑制するサプレッサーペプチド、脳血液関門、グリア細胞の神経再生制御分子にねらいを定めた。
研究方法
「第二のNKT細胞」を過剰に発現するTCRトランスジェニックマウスに、多発性硬化症の動物モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を誘導し、臨床症状の解析と免疫学的解析(細胞増殖反応、サイトカイン産生、抗体価測定)を行った。「第二のNKT細胞」を活性化する糖脂質のアナログを作製し、試験管内におけるサイトカイン誘導能を評価した。また、糖脂質アナログによるEAE治療実験を行った。SJL/JマウスにEAE再誘導抵抗性を付与するペプチド配列(PLP136-150)について、その免疫調節活性を細胞移入および抗体依存性細胞殺傷の方法によって解析した。血液神経関門の要であるtight junctionを構成する分子について、ヒト末梢神経炎の病変部位における発現を検討した。ヒト多発性硬化症の剖検凍結脳切片を用い、14-3-3蛋白、Nogo受容体の発現などを検討した。
結果と考察
「第二のNKT細胞」を過剰発現するマウスでは、EAEの臨床症状が有意に軽快した。また、EAEの発症を抑制する糖脂質リガンドを新たに同定した。治療効果の発現には抗原特異的T細胞のTh2偏倚が関与することを証明した。「第二のNKT細胞」は、多型性のないMR1分子に拘束され、その抗原認識は種差を超えている。したがって、動物実験で治療効果のあった糖脂質は、ヒト疾病の治療薬としても期待できる。PLP136-150ペプチドのEAE誘導抑制活性は、CD25陽性T細胞(T reg)の誘導を介することを証明した。多発性硬化症病変のアストロサイトにおける14-3-3蛋白やNogo受容体の発現を確認し、病変形成のメカニズムに新たな視点を与えた。
結論
免疫制御機構の基礎研究により、免疫性神経疾患に対して治療効果の期待できる新しい合成化合物の同定に成功した。また、神経再生の鍵を握るグリア細胞の病理学的研究によって、新しい治療戦略が浮かび上がってきた。

公開日・更新日

公開日
2005-04-28
更新日
-