内因性ユートロフィンの発現増強による 筋ジストロフィーの画期的治療法の開発

文献情報

文献番号
200400753A
報告書区分
総括
研究課題名
内因性ユートロフィンの発現増強による 筋ジストロフィーの画期的治療法の開発
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
武田 伸一(国立精神・神経センター神経研究所遺伝子疾患治療研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 石浦 章一(東京大学大学院総合文化研究科)
  • 鈴木 友子(国立精神・神経センター神経研究所遺伝子疾患治療研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
42,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 ジストロフィン欠損による筋ジストロフィーにおいて内因性ユートロフィンの発現を増強する治療法を確立する目的で,ユートロフィンの発現調節機序をトランスジェニックマウスを用いて解析したが,骨格筋においてはβ-galの発現が認められず,他の発現制御領域の存在が示唆された。次のステップとして,イントロンエンハンサーをクローニングし,新たにトランスジェニックマウス(Tg)を作出する。
 ジストロフィン欠損で,しかも従来より大型のモデル動物に筋ジストロフィー犬がある。本研究では,筋ジストロフィー犬の分子病態を明らかにし,治療用モデルとして確立することを目的とした。
研究方法
1. ユートロフィンの転写調節
 2000年に報告されたユートロフィンのイントロン・エンハンサーを増幅し,前回作成したTgの上流に挿入した。直線化したプラスミドを受精卵に注入してF0を得て,サザンブロッティングにてTgの有無を確認した。
2.新たなモデル動物の開発
 筋ジストロフィー犬及びその対照犬について,3ヶ月ごとに採血を行い,その血清についてcardiac Troponin-I(cTN-1)の検出を試みた。
結果と考察
1.新たなユートロフィン遺伝子上流Tgマウスの作成
 2ラインのTgのラインを確認,確立した。年度内にもβ-galの発現解析を予定している。5’-UTRや3’-UTRのユートロフィンmRNAの安定化における役割を調べるとともに,その制御に関わるRNA結合蛋白質の解析も行う必要がある。
2.新たなモデル動物の分子病態
 筋ジス犬の血清を検索したところ,最高値で40 ng/mlのcTN-Iが検出された。そこで血清のWestern解析を行った結果,calpainによるcTN-Iの分解産物と考えられる18 kDa及び14 kDaのbandが検出された。さらに,筋ジス犬のPurkinje線維においてのみ,cTN-Iの分解産物が検出された。今後は,なぜPurkinje線維においてcalpainの活性化が生ずるのか,明らかにする必要がある。
結論
1.ユートロフィンのプロモータの上流にイントロン・エンハンサーを連結したTgマウスを作出し,2ラインを得た。
2.筋ジストロフィー犬心刺激伝導系を構成しているPurkinje線維ではcalpainによりcTN-Iが分解し,心筋障害を生ずる可能性がある。

公開日・更新日

公開日
2005-06-29
更新日
-