運動ニューロン疾患の病態に基づく治療法の開発

文献情報

文献番号
200400752A
報告書区分
総括
研究課題名
運動ニューロン疾患の病態に基づく治療法の開発
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
祖父江 元(名古屋大学大学院医学系研究科(神経内科))
研究分担者(所属機関)
  • 道勇  学(名古屋大学大学院医学系研究科(神経内科))
  • 田中 啓二(東京都臨床医学総合研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
39,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ALSおよびSBMAの神経変性の病態における分子機構を明らかにし、病態に基づく治療開発を行った。
研究方法
Dorfin結合蛋白質の探索:HEK293細胞にDorfinを強制発現させ、マススペクトロメーターを解析した。
SBMA剖検組織の病理学的検討:遺伝子検査で診断が確定したSBMA患者11名の剖検組織を用い、免疫組織化学を行った。
SBMAに対するLHRHアナログの臨床試験: 5人のSBMA患者に対し、Leuprorelin 3.75mg 4週毎の皮下投与を6ヶ月間行った。
ユビキチン・プロテアソーム系の解析:リコンビナントタンパク質を用いて再構成ユビキチン化システムを構築した。
結果と考察
Dorfin結合蛋白質の探索:マススペクトロミーの解析の結果得た6つの候補蛋白質のうち、valosin-containing protein(VCP)/p97は内在性Dorfinと結合し複合体を形成し、Dorfinのユビキチンリガーゼ活性を調節していた。
SBMA剖検組織の病理学的検討:抗ポリグルタミン抗体を用いた免疫組織化学では脊髄前角細胞の核のびまん性染色が認められ、その頻度はCAG数と相関しており、運動ニューロン変性の病態に直接的に関与しているものと考えられた。
LHRHアナログの臨床試験:治療により血清creatine kinase(CK)値は有意に低下し、陰嚢皮膚生検での変異ARの異常蓄積も有意に減少した。現在、Leuprorelinのプラセボ対照二重盲検試験を施行中である。
ERAD分子機構の解明: N結合型糖タンパク質の結合する細胞内レクチンの探索により分離したFbs1はSCF複合体Skp1-Cullin1-F-box蛋白質(略記:F-box)-Roc1型ユビキチンリガーゼの標的識別サブユニットであった。
結論
VCP/p97はDorfinのユビキチンリガーゼ活性に重要であり、運動ニューロン疾患治療の重要な標的分子となりうる。変異ARのびまん性集積はSBMAの病態形成の鍵となるものであり、その制御が治療の重要な標的と考えられる。また、ERADに関与する糖鎖識別ユビキチンリガーゼが運動ニューロンの変性に関与している可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2005-06-29
更新日
-