難治性自律神経失調症による重度の起立性低血圧を克服し、寝たきりを防止するバイオニック動脈圧反射装置の臨床開発に関する研究

文献情報

文献番号
200400751A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性自律神経失調症による重度の起立性低血圧を克服し、寝たきりを防止するバイオニック動脈圧反射装置の臨床開発に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 隆幸(国立大学法人 高知大学(医学部))
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
4,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
シャイ・ドレーガー症候群などの自律神経失調症では、生命維持に極めて重要な血管運動中枢が侵され、動脈圧受容器を介した交感神経系による血圧調節機能が廃絶するため重度の起立性低血圧を合併し、ついには、寝たきり状態となることが多く、生活の質が著しく障害される。そこで、本研究では、実験的臨床研究により、起立性低血圧を克服するための機能再建装置「バイオニック動脈圧反射装置」を開発する。
研究方法
圧センサーによる血圧計測→血管運動中枢の機能を代行するコンピュータ→硬膜外カテーテル電極→交感神経→血管床からなるフィードバック血圧制御装置を開発し、その有効性を術中の起立性低血圧モデルで検証した。
(1)血圧制御装置の最適設計のために、術中に検査・診断目的で脊髄誘発電位を記録する46~76歳の20人の患者を対象として、不規則な脊髄交感神経刺激に対する血圧応答から伝達関数を同定した。
(2)膝の人工関節置換術中の大腿部圧迫止血帯の急速解除による血圧低下が起立性低血圧と同様の機序か否かを、58~72歳の11人の患者を対象に調査した。
(3)大腿部圧迫止血帯の急速解除による血圧低下がバイオニック装置の使用により防止されるか否かを調べた。
(倫理面への配慮)
本研究計画は、平成14年10月に所属施設の倫理委員会により承認されている。
結果と考察
(1)脊髄交感神経刺激に対する血圧応答は、二次の低域通過型の伝達関数で近似され、定常ゲインは0.4、減衰係数は2.6、固有周波数は0.06 Hz、ラグ時間は9秒であった。シュミレーション解析により、比例補償係数を1、積分補償係数を0.1にすることによって、血圧制御装置の最適設計が可能であるという結果を得た。
(2)大腿部の圧迫止血帯の急速解除は中心静脈圧の低下を伴い、起立性低血圧とよく似た血行動態変化を誘発することが確認された。
(3)設計したバイオニック動脈圧反射装置により、大腿部圧迫止血帯の急速解除による血圧低下を防止可能であることが確認された。
結論
(1)バイオニック動脈圧反射装置の臨床応用に関する実現可能性が示された。
(2)バイオニック動脈圧反射装置を術中血圧の自動管理に応用すれば麻酔事故の防止に役立つ可能性がある。

公開日・更新日

公開日
2005-04-20
更新日
-