小胞体制御による神経細胞死抑制・神経変性治療

文献情報

文献番号
200400750A
報告書区分
総括
研究課題名
小胞体制御による神経細胞死抑制・神経変性治療
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
小川 智(金沢大学大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 内山安男(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 山嶋哲盛(金沢大学大学院医学系研究科)
  • 井上貴文(東京大学医科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
35,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は虚血だけでなくパーキンソニズムなどの神経変性疾患における小胞体機能異常を捉え、神経変性疾患に対する基本的戦略として神経細胞の小胞体環境の制御方法を確立しようとするものである。
研究方法
1) メグシン発現ヘテロ接合体ラット(以下、Tg Megと略す)およびコントロールとしてメグシントランスジーンを持たない野生型ラット(Non Tgと略す)を用い、免疫組織染色を行った。
2) 生後1週齢のGFP-LC3を発現したマウスを用いて、低酸素-脳虚血(H-I)負荷をかけ、その後の海馬CA1領域の錐体細胞の変化を観察した。
3) ERAD関連蛋白であるHerp/SUP細胞株を確立した。
結果と考察
1) 慢性小胞体ストレスによる神経細胞死
Tg Megは、正常に生育するものの、生後12ヶ月で、行動テストにて記銘力低下を示した。Tg MegではCA1領域にcaspase-12、caspase-3の活性化を示し、同領域における神経細胞密度の低下を示した。さらにcaspase-12の活性化は黒質緻密層でもみられた。メグシンの過剰発現によって慢性的に小胞体負荷のかかった神経細胞で慢性的かつ緩徐な細胞死が起こることを示している。
2) 小胞体ストレスからオートファジーへ
生後5, 9, 21, 60日目のC57/BL6マウスに片側中大脳動脈結紮により虚血性神経細胞死を誘導した。Caspase-3の活性化、cytochrome cの放出などアポトーシス経路の活性化は、幼弱なマウスほど顕著に見られたが、ネクローシス経路の活性化はマウスの年齢と無関係であった。さらに、LC3-IIの抗体で評価されるオートファジー経路は加齢に伴って増長された。加齢に伴って、小胞体からオートファジーに至る細胞死の経路がより重要になるとが示された。
3) 小胞体由来細胞死抑止剤スクリーニング系の開発
Herp/SUP細胞株は、小胞体ストレスに特異的に脆弱性を示す。これにより小胞体由来の細胞死を抑止する薬剤のスクリーニングか可能である。
結論
慢性的な小胞体ストレスが神経変性の病態生理に深く関与すること、小胞体ストレスからオートファジーに至る経路が、神経細胞死にとって重要な経路となっていることを示している。本研究グループはHerp/SUPノックアウト細胞を用いた薬剤の大量スクリーニングを開始し、さらにin-vivoでの実験系を組み合わせ、画期的新薬の開発を目指す。

公開日・更新日

公開日
2005-04-28
更新日
-