筋萎縮性側索硬化症に対する肝細胞増殖因子(HGF)を用いた 挑戦的治療法の開発とその基盤研究

文献情報

文献番号
200400749A
報告書区分
総括
研究課題名
筋萎縮性側索硬化症に対する肝細胞増殖因子(HGF)を用いた 挑戦的治療法の開発とその基盤研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
糸山 泰人(東北大学大学院医学系研究科神経内科)
研究分担者(所属機関)
  • 谷口直之(大阪大学大学院医学系研究科生化学)
  • 中川原 章(千葉県がんセンター生化学研究所)
  • 船越 洋(大阪大学大学院医学系研究科分子組織再生学)
  • 青木 正志(東北大学病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
28,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は最も苛酷な神経難病である筋萎縮性側索硬化症(ALS)に対して次世代の新規治療薬として期待される肝細胞増殖因子(HGF)を用いた挑戦的治療法の開発とそれに関わる基盤研究を進めることにある。
研究方法
ALSの病因と病態は不明であるが、家族性ALSの病因遺伝子Cu/Zn superoxide dismutase(SOD1)の関与が重要と考えられる。本研究グループはマウスに較べてより大型の変異SOD1遺伝子導入ALSラットを作製し、次期ALSの治療薬として注目されている肝細胞増殖因子(HGF)の髄腔内投与治療実験モデルを完成させ、以下の実験を行った。1)新規治療法開発の基盤となる神経細胞死の機序の解明、2)ALS ラットに対するHGFの髄腔内治療実験の完成とその作用機序の解明、3)HGFを用いた将来的なALS治療として再生医療や遺伝子治療の研究を行う。
結果と考察
1)運動ニューロン死の機序を解明する目的で、変異SOD1高発現のN2a細胞を作製した。高発現細胞では、cell growthの遅れがありアクチン骨格に異常が生じていた。また、新規のユビキチンリガーゼであり変異SOD1とのみ結合するNEDL1を過剰発現させた細胞ではcolony形成の数が有意に減少した。2)ALSラットに対するHGFの髄腔内投与実験をALS発症後から行なった。その結果、発症から死亡までの平均罹病期間がHGF投与群において対照群に比べて62.7%の延長が確認された。その病態抑制の機序としてcaspase-3、9の抑制、EAAT2の発現増加およびXIAPの保持が重要と考えられた。3)ALSラット脊髄では未分化な神経前駆細胞の増殖は、ALS発症後期から認められる。このラットへのHGF髄腔内投与にて脊髄の新生細胞増殖の促進が確認された。また、ALSの遺伝子治療のベクターとして検討しているAAVとHSV1にHGF遺伝子を組み込み、脊髄に投与することにより運動ニューロンにHGFの発現がみられた。そのHGF蛋白レベルは内因性HGFレベルの3?5倍に上昇していた。
結論
ALSの新規治療薬の開発にはHGFが重要であり、今回の治療実験においてALS発症後からのHGFの髄腔内投与にても明らかな延命効果が認められた。この事実は今後のALSのHGF治療の臨床応用について大きな進歩と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2005-04-20
更新日
-