免疫性末梢神経障害の病態解明と治療法に関する研究

文献情報

文献番号
200400747A
報告書区分
総括
研究課題名
免疫性末梢神経障害の病態解明と治療法に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
楠 進(近畿大学(医学部))
研究分担者(所属機関)
  • 結城伸泰(独協医科大学)
  • 千葉厚郎(杏林大学(医学部))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
23,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
免疫性末梢神経障害患者血中の抗ガングリオシド抗体に着目し、有用な診断マーカーを開発し、病態を解明して、新たな治療ストラテジーの構築を行う。
研究方法
GD1aとGD1bの複合抗原(GD1a/GD1b)に対する抗体陽性のギラン・バレー症候群(GBS)多数例の臨床特徴を解析した。GBS患者血中の抗GD1b抗体の反応性に対するリン脂質の効果を検討した。マイコプラズマ菌体脂質を接種して得た抗Gal-C抗体陽性ウサギ血清(M血清)をラット坐骨神経に注入し病理学的に検討した。複合型ガングリオシドを欠くマウス(Gマウス)のライヴィエ絞輪周囲を免疫組織学的に検討した。抗GD1b抗体の後根神経節(DRG)培養細胞への作用を検討した。ヒトの第3, 4, 6脳神経を抗GQ1b抗体で免疫染色し、共焦点レーザー顕微鏡・電子顕微鏡により観察した。C. jejuniのリポオリゴ糖(LOS)合成酵素遺伝子cst-IIの遺伝子多型を検討した。
結果と考察
抗GD1a/GD1b抗体はGBSの重症化と密接に関連した。GBSの抗GD1b抗体のうち、Gal-GalNAc基結合抗体の活性は酸性リン脂質により増強されるが、ジシアロシル基を認識部位に含む場合は増強されなかった。M血清の神経内注入は脱髄を生じた。Gマウスでは、末梢神経傍絞輪部のカリウムチャネル局在異常がみられた。抗GD1b抗体陽性血清の添加で培養DRG細胞の生存率は有意に低下した。GQ1bは傍絞輪部のシュワン細胞膜上に高度に集積がみられた。Thr型のcst-IIはGM1・GD1a様LOS、抗GM1抗体・抗GD1a抗体および四肢麻痺と、Asn型はGQ1b様LOS、抗GQ1b抗体および眼筋麻痺・失調と関連した。
結論
抗GD1a/GD1b IgG抗体は、GBSの重症化の指標であり重症化メカニズム解明の手がかりとなる。酸性リン脂質の抗体活性増強効果には陰性荷電が関連する。マイコプラズマ肺炎後に分子相同性機序で産生された抗Gal-C抗体は脱髄活性をもつ。ガングリオシドとカリウムチャネルの局在の関連が示唆される。抗GD1b抗体はDRGの神経細胞障害性に作用する。GQ1bはヒトの眼球運動関連脳神経のシュワン細胞傍絞輪部膜表面に高濃度に存在する。C. jejuniのLOS合成酵素遺伝子多型により、GBS患者血中抗体の反応性と、臨床像が規定される。

公開日・更新日

公開日
2005-04-21
更新日
-