ALS2分子病態解明とALS 治療技術の開発

文献情報

文献番号
200400742A
報告書区分
総括
研究課題名
ALS2分子病態解明とALS 治療技術の開発
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
池田 穰衛(東海大学総合医学研究所(分子神経科学部門))
研究分担者(所属機関)
  • 祖父江 元(名古屋大学大学院医学系研究科)
  • 岩倉 洋一郎(東京大学医科学研究所ヒト疾患モデル研究センター)
  • 成宮 周(京都大学大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
34,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は上位運動ニューロンおよび下位運動ニューロンの選択的変性を特徴とする神経変性疾患である。ALSの分子病態は未だ不明であり、その治療薬ならびに治療法も確立されていない。本研究では、家族性ALSの新たな遺伝子“ALS2遺伝子”に注目し、その遺伝子ならびに遺伝子産物の生体における分子機能の解明を目的とする。そして、最終的にALSの疾患分子病態の解明と治療技術の開発に結びつく知見ならびに素材を得ることを目指す。
研究方法
平成16年度は、以下の3項目についての研究を実施した。(1)ALS患者および健常者におけるALS2遺伝子配列多型を解析し、統計学的手法を用いて遺伝子配列多型と病気との関連を解析した。(2)これまでに作出されたALS2疾患モデル動物としてのAls2遺伝子欠損マウスの生化学的、免疫組織学的、行動学的解析を行った。(3)細胞におけるRho情報伝達系の解析を昨年度に引き続き行うとともに、脳神経系においてALS2蛋白質と結合する因子の同定を試みた。
結果と考察
本年度は、以下のような成果が得られた。(1)総計56ヶ所の配列多型をALS2遺伝子内に同定した。本邦の孤発性ALS患者と健常者におけるこれらALS2遺伝子配列多型解析から、ALS2遺伝子が孤発性ALSの発症危険因子としての主要要因でないことを明らかにした。(2)F2のAls2ノックアウトマウスが1年9ヶ月齢を経過してもヒトALS様の運動ニューロン疾患症状を示さないことを確認した。遺伝的背景の影響を受けている可能性を排除するため、戻し交雑によるC57BL/6JおよびFVB/N背景への純系化を行っている。(3)Rho情報伝達の細胞分裂期における新規分子作用の解明、ならびに脳内においてALS2蛋白質と結合する蛋白質因子の同定に成功した。
結論
本年度の研究により、ALS2遺伝子産物の細胞内における分子機能の一端が明らかにされるとともに、ALS2遺伝子配列多型およびAls2遺伝子欠損マウスの研究における問題点ならびに新たな研究課題を導き出すことができた。今後、得られた実験材料ならびに知見を利用した研究を継続することにより、ALSおよびその関連運動ニューロン疾患患者におけるALS2遺伝子配列の変異・多型の生物学的な意義も解明され、その臨床症候の分子的理解、分子診断法、治療法・治療薬開発への道が開かれるものと期待される。

公開日・更新日

公開日
2005-04-20
更新日
-

文献情報

文献番号
200400742B
報告書区分
総合
研究課題名
ALS2分子病態解明とALS 治療技術の開発
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
池田 穰衛(東海大学総合医学研究所(分子神経科学部門))
研究分担者(所属機関)
  • 祖父江 元(名古屋大学大学院医学系研究科)
  • 岩倉 洋一郎(東京大学医科学研究所ヒト疾患モデル研究センター)
  • 成宮 周(京都大学大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は上位運動ニューロンおよび下位運動ニューロンの選択的変性を特徴とする神経変性疾患である。ALSの分子病態は未だ不明であり、その治療薬ならびに治療法も確立されていない。本研究では、家族性ALSの新たな遺伝子“ALS2遺伝子”に注目し、その遺伝子並びに遺伝子産物の生体における分子機能の解明並びに疾患モデル動物の作出を目的とする。そして、最終的にALSの分子病態解明と治療法開発のための知見・情報の収集、基本技術ならびに実験系の確立を目指す。
研究方法
本研究では、1)ALS2遺伝子がALSあるいは類似運動ニューロン疾患の病態における修飾因子として働いている可能性、2)ALS2疾患モデル動物としてのAls2遺伝子欠損マウスの作出、3)ALS2遺伝子産物(ALS2蛋白質)及びその機能ドメイン(グアニンヌクレオチド交換因子)の細胞内分子機能、に関する3項目の研究を実施した。
結果と考察
本研究により、以下の成果が得られた。1)本邦の孤発性ALSならびにその類似運動ニューロン疾患患者および健常者の血液サンプルの集積ならびにALS2遺伝子配列解析を行った。特に、本邦の孤発性ALS患者115名と健常者110名におけるALS2遺伝子配列多型の統計的解析結果から、ALS2遺伝子が孤発性ALSの発症危険因子としての可能性が低いことが示された。2)Als2ノックアウトマウスの作出に成功した。1年9ヶ月齢を経過した現時点ではヒトALS様の運動ニューロン疾患症状を示さないことが確認された。3)ALS2蛋白質が新規のRab5GEFであることを発見し、細胞内においてはエンドゾーム動態調節に関わることを明らかにした。また、Rho情報伝達の神経細胞軸索伸長及び細胞分裂期における新規分子作用の解明ならびに脳内においてALS2蛋白質と結合する蛋白質因子の同定に成功した。
結論
本研究により、ALS2遺伝子産物の細胞内における分子機能の一端が明らかにされたとともに、ALS2遺伝子の遺伝子配列多型の同定、Als2遺伝子欠損マウスの作出などの成果が得られた。今後、得られた実験材料並びに知見を利用した研究を継続することにより、ALS及びその関連運動ニューロン疾患患者におけるALS2遺伝子配列の変異・多型の生物学的な意義も解明され、その臨床症候の分子的理解、分子診断法、治療法・治療薬開発への道が開かれるものと期待される。

公開日・更新日

公開日
2005-04-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2006-02-20
更新日
-