細胞外マトリックスの異常による遺伝性筋疾患の 病態解明と治療法に関する研究

文献情報

文献番号
200400741A
報告書区分
総括
研究課題名
細胞外マトリックスの異常による遺伝性筋疾患の 病態解明と治療法に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
平澤 恵理(順天堂大学医学部老人性疾患病態・治療研究センター/脳神経内科)
研究分担者(所属機関)
  • 林由起子(順天堂大学大学院医学研究科)
  • 村山季美枝(順天堂大学大学院医学研究科)
  • 多田昇弘(順天堂大学大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
19,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は細胞外マトリックスの異常に起因する遺伝性筋疾患の発症機序の解明とそれにより細胞外マトリックス/基底膜の筋発生、筋疾患における役割を明らかにし、その知見を筋疾患一般の治療に役立てていくことである。筋細胞を取り巻く細胞外マトリックスである基底膜とその関連分子の役割と機能の解明を行い、これらの分子の異常によって起こる筋疾患の発症分子機構を明らかにし、その治療法を目指す。
研究方法
細胞外マトリックスの欠損による遺伝性筋疾患の発症機序の解明のため症例を蓄積し、遺伝子異常を同定し、臨床症状との関連性を検討する。パールカン、VI型コラーゲン欠損疾患を対象疾患とする。パールカン欠損疾患に関しては症例が少なくまた筋生検により神経筋接合部が得られないことが多いため、ミオトニアの発症機序解明への効率が悪い。そこでNIHとの共同研究によりパールカンノックアウトマウスの軟骨症状をレスキューし延命をはかり、SJSモデルマウスとする。このマウスの電気生理学的、筋病理学的、電顕を使用した超微細構造解析によりパールカン欠損による筋障害の発症機構を解明する。
結果と考察
パールカン欠損疾患SJS、 VI型コラーゲン欠損疾患としてUllrich病の遺伝子異常を解析した。ミオトニアと骨格異常の組み合わせからSJSと診断されている患者群の中にヘテロな疾患群が存在することが示唆された。VI型コラーゲンの免疫染色では完全欠損1例と基底膜での発現量の低下を示した部分欠損例8例を見出したが、部分欠損例には遺伝子欠損をみとめなかった。SJS モデルマウスは電気生理学的に筋の持続収縮を認め、 眼裂の狭小化を示した。これらの異常はSJS患者に特徴的なものであり、SJSの発症機序、治療薬剤の開発に有効な動物モデルと考えられる。このマウスの電気生理学的検討では、針筋電図によりSJS患者と類似した持続性自発性電位が確認された。SJSマウスのミオトニアの成因に関して微小電極を用いた終板電位を検討した。終板におけるAChEの部分欠損を示唆する所見が得られた。40Hzの高頻度連続神経刺激においてSJSマウスでは神経終末からアセチルコリンが刺激に対して放出されやすいことが示唆され、筋収縮異常の一因と考えられた。
結論
細胞外マトリックス/基底膜の筋発生、筋疾患における役割を明らかにし、その知見を筋疾患一般の治療に役立てていくためのモデル動物作成を行い、薬物治療のためのセットアップに成功した。さらに解析を進めていく。

公開日・更新日

公開日
2005-05-16
更新日
-

文献情報

文献番号
200400741B
報告書区分
総合
研究課題名
細胞外マトリックスの異常による遺伝性筋疾患の 病態解明と治療法に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
平澤 恵理(順天堂大学医学部老人性疾患病態・治療研究センター/脳神経内科)
研究分担者(所属機関)
  • 林由起子(国立精神神経センター 神経研究所 疾病研究第一部)
  • 村山季美枝(順天堂大学大学院医学研究科)
  • 多田昇弘(順天堂大学大学院医学研究科)
  • 杉江和馬(奈良県立医科大学神経内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
細胞外マトリックスの異常に起因する遺伝性筋疾患の発症機序の解明とそれにより細胞外マトリックス/基底膜の筋発生、筋疾患における役割を明らかにし、その知見を筋疾患一般の治療に役立てていくことである。患者やモデル動物に起こる筋障害の発症分子機構を明らかにし、その治療を目指す。蛋白質レベルでの分子機構解明は治療開発に重要と考えられる。疾患筋で起こるタンパク質レベルの変動を調べるため、プロテオミクス解析の高精度・ハイスループット化を試みる。
研究方法
細胞外マトリックスの欠損による遺伝性筋疾患の発症機序の解明のため症例を蓄積し、遺伝子異常を同定し、遺伝子異常と臨床症状との関連性を検討していく。パールカン欠損疾患に関しては症例が少なくまた筋生検により神経筋接合部が得られないことが多いためモデルマウスを作成し、電気生理学的、筋病理学的解析により筋障害の発症機構の解明を試みる。筋崩壊をプロテオミクスの手法を用いて解明するため、効率的な方法を検討する。シグナル伝達の場としての脂質ラフトに着目し、細胞外マトリックスによるシグナル分子の変化を明らかにする系をセットアップする。またプロテオミクス解析法の高精度・ハイスループット化の技術確立を行う。
結果と考察
パールカン欠損疾患SJS、 VI型コラーゲン欠損疾患としてUllrich病の遺伝子異常を解析した。ミオトニアと骨格異常の組み合わせからSJSと診断されている患者群の中にヘテロな疾患群が存在することが示唆された。さらに症例を蓄積するとともに、新規の原因遺伝子の発見をしていく必要があると考えられた。作成したSJSモデルマウスは電気生理学的に筋の持続収縮を認め、 眼輪筋持続収縮による眼裂の狭小化を認めた。また、筋病理学的に筋肥大、壊死再生、筋線維内構築異常を認めた。これらの異常はSJS患者に特徴的なものであり、SJSの発症機序、治療薬剤の開発に有効な動物モデルと考えられた。
プロテオミクス解析法の高精度・ハイスループット化が開発された。
結論
本研究により、細胞外マトリックスの異常による筋疾患の発症の分子機構の解明が進んだ。また、疾患のマウスモデル作成とその解析により、遺伝子機能と疾患の関連が明らかになってきた。細胞外マトリックスは他の分子と共同して組織の構築、維持、機能をはたすと考えられ、細胞膜との相互作用、シグナル伝達の制御などにおける共通の機構の存在が示唆される。今後、プロテオミクスでの細胞シグナル制御機構の分析により、細胞外マトリックス疾患の共通機序の解明を行い、これらの疾患の効果的な治療開発を目指したい。

公開日・更新日

公開日
2005-05-16
更新日
-