脳機能画像を用いたパーキンソン病の病態と 治療法の評価に関する研究

文献情報

文献番号
200400739A
報告書区分
総括
研究課題名
脳機能画像を用いたパーキンソン病の病態と 治療法の評価に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
福山 秀直(京都大学 大学院(医学研究科))
研究分担者(所属機関)
  • 佐治 英郎(京都大学 大学院(薬学研究科))
  • 伊藤 健吾(国立長寿医療センター)
  • 鷲見 幸彦(国立長寿医療センター)
  • 吉田 純(名古屋大学 大学院(医学研究科))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
28,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、パーキンソン病(PD)の病態および病勢について、臨床神経学と非侵襲的脳機能画像を応用し、適切な治療法の選択基準を作成することである。研究課題は、1)5IA SPECTを用いたニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)結合能に及ぼす喫煙の影響の検討、2) PDの症状とnAChR結合能の関係の検討、3) 画像因子分析を用いたレビィ小体病(DLB)の病態解明、4) PDと鑑別困難なパーキソニズムを呈する疾患のPETによる鑑別の検討、5) 精密な脳定位手術の高次脳機能から見た有効性の検討、の5つである。
研究方法
1) 喫煙習慣を有する若年健常者を対象とし、喫煙4時間後と20日間の禁煙後の2回の5-IA SPECT検査を行った。2)PD患者の中から振戦優位群および無動優位群の2群を選択し、5IA SPECT検査を施行した。3) アルツハイマー病(AD)、DLBおよび健常者(NC)を対象とし、FDG PET画像の脳表面画像において3群を分離する因子画像を求めた。4) 18F-FDG および18F-DOPA PETを施行した臨床的にPDあるいはPD関連疾患とも診断不可能な症例(PDQ群)を対象とし、大脳基底核の糖代謝とFDOPA取込み率を検討した。5)単一細胞電位記録と3Dマップを用いた定位的片側淡蒼球内節深部脳刺激手術を受けたPD患者を対象とし、術前術後の神経心理検査結果を比較検討した。
結果と考察
1) in vivoにて喫煙負荷によるnAChR結合能低下の検出に成功した。2)振戦優位群に比較して、無動優位群おけるnAChR結合能の低下を認め、抗コリン剤の効果の相違の一因と考えられた。3)ADとDLBに共通する脳糖代謝低下領域およびDLBに特異的低下領域の分離に成功した。4)糖代謝は一様でなく、その分布から後頭部低下型、前頭部低下型、非特異型に細分され、前頭部低下型では半数例がドパミン系節前ニューロンの変性のみならず、被殻、尾状核の変性を伴うものと考えられた。5)術後、多くの神経心理検査で改善の傾向を認めた。
結論
SPECTやPETによる非侵襲検査によって、PDおよびその関連疾患の病態について新たな知見を得た。本研究で行った非侵襲的手法の発展が、症状に応じた治療法の選択を可能とし、より安全で効率のよいオーダーメイド治療の開発に必須と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2005-06-03
更新日
-

文献情報

文献番号
200400739B
報告書区分
総合
研究課題名
脳機能画像を用いたパーキンソン病の病態と 治療法の評価に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
福山 秀直(京都大学 大学院(医学研究科))
研究分担者(所属機関)
  • 佐治 英郎(京都大学 大学院(薬学研究科))
  • 伊藤 健吾(国立長寿医療センター)
  • 鷲見 幸彦(国立長寿医療センター)
  • 吉田 純(名古屋大学 大学院(医学研究科))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
脳機能画像検査をパーキンソン病患者(PD)に用いて病態評価と治療への有用性を検討することを目的とした。主な研究課題は、1)5IA SPECTによるニコチン受容体(nAChR)測定法の確立及びPDにおける検討、2)PDと関連疾患であるレビィ小体病(DLB)の視覚認知機能障害の研究、3)PDのドパミン神経機能と脳糖代謝の縦断的検討及び鑑別困難であったパーキンソン症候群(PDQ群)の検討、4)精密な脳定位手術の開発及びその有効性の検討、の4つである。
研究方法
1)健常者とPD患者に5IA SPECTを行った。また、喫煙習慣を有する健常者に喫煙中と禁煙中の2回の5IA SPECTを行った。2)健常者とPD患者に視覚課題による脳賦活検査を施行した。また、アルツハイマー病患者(AD)とDLB患者にFDG PETを行い脳糖代謝画像の因子分析を行った。3)FDG、raclopride、FDOPAの各PET検査を行い、症状と対比した。4)単一細胞電位記録と3Dマップを用いた脳定位手術を施行したPD患者の術前術後の運動機能および神経心理検査結果を検討した。
結果と考察
1)5IA分布容積DVは、nAChR密度の剖検の報告と良く一致した。喫煙中ではDVの低下を認めnAChR結合能の変化をin vivoで検出した。PDでは視床・脳幹でのDVの有意な低下を認めた。特に無動優位群はDVの低下が大きく、抗ニコチン製剤の効果との関連が示唆された。2)健常者では視覚情報処理領域と前頭葉での賦活を認めた。PDでは、頭頂葉での賦活範囲が狭かった。因子分析では、ADとDLBで共通する糖代謝低下領域とDLBに特異的な糖代謝低下領域が分離された。PDやDLBでは視覚情報処理系の安静時機能低下とともに代償的反応が生じにくいと考えられた。3)線条体でのFDOPA取込み率の経時的低下を認め、運動機能の悪化を反映すると考えられた。PDQ群のPET所見は一様ではなく、PETによっても鑑別診断は困難であった。4)術後運動機能は著明に改善し、また、多くの神経心理検査で改善傾向を認め、精密な定位脳手術の有効性が示された。
結論
PDおよびその関連疾患の病態について新たな知見を得た。また、安全で有効な定位脳手術法を考案した。本研究で行った非侵襲的脳機能画像検査の発展が、症状に応じた治療法の選択を可能とし、より安全で効率のよいオーダーメイド治療の開発に必須と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2005-06-03
更新日
-