ストレス性精神障害の成因解明と予防‘法’開発に関する研究

文献情報

文献番号
200400736A
報告書区分
総括
研究課題名
ストレス性精神障害の成因解明と予防‘法’開発に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
山脇 成人(広島大学(大学院医歯薬学総合研究科))
研究分担者(所属機関)
  • 森信 繁(広島大学(大学院医歯薬学総合研究科))
  • 岡本 泰昌(広島大学(大学院医歯薬学総合研究科))
  • 神庭 重信(九州大学(大学院医学研究院))
  • 尾藤 晴彦(東京大学(大学院医学系研究科))
  • 井ノ口 馨(三菱化学生命科学研究所)
  • 利島 保(広島大学(大学院教育学研究科)   )
  • 田中 康雄(北海道大学(大学院教育学研究科))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
38,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、ストレス性精神障害の病態に密接に関与する、ストレス脆弱性形成の脳内機序を、分子生物学的・脳機能画像的に解明し、同時に児童精神医学的観点からの予防法を提唱することにある。
研究方法
1. ストレス脆弱性形成の分子機構の解明に関する研究
(1) 母子分離によるストレス脆弱モデルを用い、海馬の遺伝子・蛋白の発現障害を検討し、ストレス脆弱性形成との関連を解明する。 (2) GFPで可視化したアクチンを用い、海馬興奮性神経細胞でのアクチン形態制御の分子機構を検討する。(3) 薬物による神経新生抑制ラットを作製し、ストレス脆弱性と神経新生抑制の関連を行動学的に検討する。
2. ストレス性精神障害の病態に関する脳機能画像解析研究
(1) ストレスへの適応強化の心理機制として将来の報酬予測に着目し、その脳機能障害についてfMRIを用いて健康者・うつ病者間での検討を行う。(2) 母子間愛着形成の客観的検討のため、健常新生児を対象に嗅覚刺激(母乳・人工乳)に伴う脳血流変化をNIRSで計測する。
3. ストレス性精神障害の発症予防に関する児童精神医学的検討
独自に開発した3歳時健診用の、親の子育ての困難さや軽度発達障害のチェックリストを施行して、その結果に基づいた養育上の早期家族支援体制を構築する。
結果と考察
課題1:ストレス脆弱ラット海馬ではIGF情報系遺伝子やIntegrin 3発現の低下があり、幼少期の神経新生や細胞間接着の障害が脆弱性形成に関与していると考えられる。スパイン形態変化を引き起こすアクチン動態の制御には、CaMK1やPSD-95といった蛋白の関与が発見された。課題2:うつ病者では前頭前野の機能低下による将来報酬予測の低下が示され、この結果はうつ病者が短絡的行動を最適と選択している可能性を示唆している。母乳より人工乳を繰り返し経験することによって、乳児の母乳による前頭前野の活性化の弱まることが示され、乳児の愛着形成には前頭前野の活性化の必要なことが示唆される。課題3:チェックリストの結果、言語や遊びを介した発達を重点に親は子供の成長を評価しており、子供の成長評価と子育て上のストレスとの相関を今後は検討すべきと思われる。
結論
ストレス脆弱性形成には乳幼児期の養育上のストレスから、前頭前野では愛着機能や報酬予測機能などの脳機能低下が、海馬では神経新生抑制や細胞間接着の障害による情報伝達機能の障害が関与していることが示された。

公開日・更新日

公開日
2005-04-20
更新日
-