神経伝達機能イメージングを用いた機能性精神疾患の 治療効果の客観的評価法及び診断法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
200400734A
報告書区分
総括
研究課題名
神経伝達機能イメージングを用いた機能性精神疾患の 治療効果の客観的評価法及び診断法の確立に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
大久保 善朗(日本医科大学精神医学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 須原哲也(独立行政法人放射線医学総合研究所脳機能イメージング研究開発推進室)
  • 松浦雅人(東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科)
  • 加藤元一郎(慶応大学医学部精神神経科学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
41,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
PETによる神経伝達機能イメージングの技術を用いて、1)薬理治療研究として:抗精神病薬・抗うつ薬の作用・副作用と脳内特異的作用点の変化との関連を調べ、治療効果の客観的評価法を確立し合理的治療法の開発を行う。さらに2)病態研究として:統合失調症および気分障害患者の神経伝達機能の異常を調べ、機能性精神疾患の病態診断および早期診断法の開発を目指した。
研究方法
1)薬理治療研究:①各種抗精神病薬によるドーパミン(DA)D2受容体占有率、②維持療法時のD2受容体占有率、③DA代謝の変化、④抗うつ薬による5-HTトランスポーター(5-HTT)占有率、⑤無けいれん性通電療法(mECT)による5-HT1A受容体の変化を調べた。2)病態研究:⑥統合失調症のD2受容体、⑦DA代謝、⑧DAトランスポーター(DAT)を、⑧気分障害の5-HTTを調べた。また、⑩MRI、SPECTを用い⑩-(1)向精神薬の情動反応およぼす作用、⑩-(2)眼球運課題遂行中の脳賦活、⑩-(3)前頭前野の記憶機能、⑩-(4)老年期のうつ病の脳血流を調べた。
結果と考察
1)薬理治療研究:①至適D2占有率の観点から用量の再検討が必要な抗精神病薬がある。②症例により70%以下のD2占有率でも維持療法が可能な例を認めた。③治療によりDA代謝の亢進する脳部位を認めた。④フルボキサミンによる5-HTT占有率の継時変化は血中濃度の値と乖離していた。⑤うつ病では側頭葉で5-HT1A受容体が低く、mECT実施後に回復した。2)病態研究:⑥統合失調症の視床でD2受容体が減少、⑦前部帯状回おいてDA代謝の亢進していた。⑧ [11C]PE2Iの定量評価法を開発した。⑨ 気分障害患者での5-HTTの検討を開始した。⑩-(1) 向精神薬の不快情動反応に対する抑制効果を明らかにした。⑩-(2)統合失調症では前頭前野と皮質下の視床-線条体回路の機能異常を認めた。⑩-(3)記憶検索における前頭葉の役割と機能連結を明らかにした。⑩-(4)うつ病仮性痴呆において前頭葉内側部と極部および底部の血流低下を明らかにした。
結論
脳内占有率の観点から向精神薬の中に用量設定の見直しが必要なものがある。また血中濃度と脳内占有率の乖離を示すことがある。今後、脳内動態を考慮した科学的な処方法の設定が望まれる。また、機能性精神疾患について神経伝達機能異常の一端を明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2005-06-29
更新日
-