アルツハイマー病の神経細胞死を誘導する遺伝子機能の 解析と抑止法の開発

文献情報

文献番号
200400732A
報告書区分
総括
研究課題名
アルツハイマー病の神経細胞死を誘導する遺伝子機能の 解析と抑止法の開発
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
田平 武(国立長寿医療センター研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 大八木保政(九州大学医学部付属病院)
  • 工藤 喬(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 巻淵隆夫(国立療養所犀潟病院)
  • 武田雅俊(大阪大学大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
36,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は細胞内・外Aβによる神経細胞死の機構を明らかにする中から、それを抑止する方法を開発することを目的とする。
研究方法
1. Aβと結合し細胞死に関わる分子をtwo hybrid systemにより明らかにし、その機能を明らかにする。
2. 細胞内Aβの分解促進剤を開発する為に、合成Aβ1-40を蛍光標識し、浸透圧法により細胞にとり込ませ、その分解速度を測定する。これに各種化合物をかけてAβ分解を促進する物質を選択する。
3. 小胞体ストレスに際し誘導されるシャペロンGRP-78の誘導剤GiXがAβ産生に与える影響について解析する。
4. 細胞内Aβの局在を免疫組織染色により明らかにする。
5. 非ステロイド性消炎剤の中からバイオインフォマティックスを用いてAβ42切断阻害活性を有しNotch切断阻害活性を有しないものを選択する。
結果と考察
1. Aβと結合し細胞死を誘導する新規物質Aβ-related death-inducing protein (AB-DIP)を得た。AB-DIPは776個のアミノ酸からなり、caspase activation and recruitment domain (CARD) 、核移行シグナルを有し、AB-DIPを強発現すると細胞死が誘導され、細胞内・外のAβによりその細胞死は増強された。ドミナントネガティブAB-DIP及びAB-DIPに対するsiRNAはAβによる細胞死を抑制した。AB-DIPはADにおける細胞死を抑止する新しい標的になると思われる。
2. 細胞内Aβ分解はプロテアソーム阻害剤であるMG132の添加により抑制され、化合物Aを加えるとその分解は有意に促進された。
3. GiXはGRP-78 の誘導を引き起こし、小胞体ストレスを緩和するとともにAβ産生を抑制した。
4. 細胞内Aβは顆粒状に細胞質内に局在し、ER、Golgiに対応した。
5. NSAIDのうちAβ42特異的阻害作用を有する新規コンパウンドを一つ得た。このIC50は20μM程度で、sulindacの半分以下であった。この物質をシードとして更に改良を加えることでAβ42特異的切断阻害剤が開発されると期待される。
結論
1. Aβと結合し細胞死を誘導する新規物質AB-DIPを見出した。
2. 細胞内Aβ分解を促進する化合物Aを得た。
3. 細胞内Aβの局在が少し分かった。
4. GiXは小胞体ストレスを緩和し、Aβ産生を抑制した。
5. sulindacより優れたNSAIDを一つ見出した。

公開日・更新日

公開日
2005-05-16
更新日
-