双生児法による脳とこころの発達過程及び精神疾患成因の解明

文献情報

文献番号
200400731A
報告書区分
総括
研究課題名
双生児法による脳とこころの発達過程及び精神疾患成因の解明
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
岡崎 祐士(三重大学 医学部 精神神経科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 加藤忠史(理化学研究所 脳科学総合研究センター)
  • 陣野吉廣(琉球大学 医学研究科)
  • 斎藤 治(国立精神・神経センター 武蔵病院)
  • 福田正人(群馬大学 医学系研究科)
  • 丹野義彦(東京大学大学院 総合文化研究科)
  • 大木秀一(石川県立看護大学)
  • 大野 裕(慶應義塾大学 保健管理センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
25,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
精神疾患の遺伝要因と精神疾患の病態の座としての脳の形態学的・機能的発達過程の詳細及び精神疾患患者におけるその発達の偏りを双生児法によって明らかにしようとするものである。疾患関連遺伝子研究は通常、連鎖・関連研究によって行われるが、多因子性common diseaseとしての精神疾患の遺伝子研究は、民族差や家系差、遺伝的異質性の存在が確実視されるため、家系の個別性に応えうる研究方法でなければならない。双生児法がそれに相応しい。対象疾患は統合失調症、双極性障害、自閉症の他、パニック障害等も視野において、精神疾患の成因と病態、治療法(薬)開発、疾患予防法、子どもから大人に至る脳とこころの発達過程、精神保健諸施策の研究支援条件等を明らかにしようとするものである。
研究方法
研究戦略として主任研究者らが工夫した方法は、遺伝的背景が同一の一卵性双生児を対象に、ゲノム・遺伝子解析技術や精密な脳画像解析技術を適用する方法である。一卵性双生児精神疾患不一致例の遺伝子発現の差異とゲノムの差異を見出し、精神疾患罹患と非罹患に関連する遺伝子発現と遺伝子発現修飾機構の差異を同定する。また、一卵性双生児と健常者における小児期から成人期までの脳形態(MRI)・機能(NIRS)の発達過程を解明し、同時期の精神疾患患者の脳発達に偏りがあるか否かを解明するものである。この過程を通じて、また独自に精神疾患及び健常双生児登録の拡大・創設を目指す。この双生児登録は精神保健、母子保健、人類遺伝学等幅広い研究支援条件となる。
結果と考察
平成16年度は、一卵性双生児の双極性障害や統合失調症の不一致例において遺伝子発現差異やゲノム差異が生じる原因としてメチル化の関与の可能性を検討した。また、昨年度までに技術的準備を完了した脳の形態と機能の発達経過解明について、まだ対象数は少ないながら双生児を対象として計測した。「精神疾患双生児全国共同研究」(27大学3研究機関)では対象双生児の発見を追加した。健常双生児登録については、慶應双生児プロジェクトのような地域住民ベースの登録と団体ベースの登録があることを示した。
結論
脳画像研究のやや遅れがあったが本年度も、全体に初期の成果を上げた。一卵性双生児が精神疾患について不一致となる機序には、発癌と同じくメチル化の差異が関与している可能性がある。発達についても双生児法により有用な情報が提供されることが確認できた。双生児登録の拡充が必要である。

公開日・更新日

公開日
2005-11-25
更新日
-

文献情報

文献番号
200400731B
報告書区分
総合
研究課題名
双生児法による脳とこころの発達過程及び精神疾患成因の解明
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
岡崎 祐士(三重大学 医学部 精神神経科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 加藤忠史(理化学研究所脳科学総合研究センター)
  • 陣野吉廣(琉球大学大学院医学研究科)
  • 斎藤 治(国立精神神経センター・武藏病院)
  • 福田正人(群馬大学大学院 医学研究科)
  • 丹野義彦(東京大学大学院総合文化研究科)
  • 大木秀一(石川県立看護大学)
  • 大野 裕(慶応義塾大学・保健管理センター)
  • 辻田高宏(廣中病院)
  • 今村 明(長崎大学大学院医歯薬総合研究科)
  • 佐々木司(東京大学保健センター)
  • 浅香昭雄(慶友会城東病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は、双生児法の特長と利点を活かして精神疾患の成因を解明する方法の確立と、その研究リソースの確立、および具体的に一卵性双生児不一致例にゲノム解析法と脳画像法を適用して精神疾患の成因に迫ろうとするものである。
 精神疾患の遺伝子はまだ確実には同定されていず、遺伝因の実体とその関与の仕組みはなお不詳、遺伝因と環境リスクファクターとの相互作用の実体はなおのこと不明である。多因子疾患で頻度の高い精神疾患は、民族差や家系差、遺伝的異質性が見られるので、家系の個別性にも応えうる研究方法でなければならない。
 統合失調症の有力な成因仮説として神経発達障害説があるが、精神疾患の脳形態・機能発達過程の詳細は不明であり、患者における脳発達の偏りが分かっていない。この基礎的解明が重要である。
研究方法
 これらの要請に応えうる研究戦略として主任研究者らが工夫した方法は、遺伝的背景が同一の一卵性双生児疾患不一致例を対象に、ゲノム・遺伝子解析技術や精密な脳画像解析技術を適用する方法である。具体的には精神疾患不一致例で、遺伝子発現差異とゲノム差異を見出し、遺伝子発現と修飾機構の差異を同定する。また、一卵性双生児と健常者における小児期からの脳形態(MRI)・機能(NIRS)発達過程を解明し、同時期の精神疾患患者の脳発達に偏りがあるか否かを検討する。この過程を通じて、精神疾患及び健常双生児登録を拡充・創設を目指す。
結果と考察
精神疾患双生児不一致の原因の1つとして、遺伝子発現修飾機構、とくにメチル化の差異が原因である可能性を明らかにした。脳画像による発達部位の同定はやや遅れているが、連合野ほど一卵性双生児間で思春期頃より一致が低下し、前頭葉では背外側より眼窩面の一致が低いことが分かった。双生児登録は地域・団体ベース両方とも見込みが生じた。
結論
一卵性双生児不一致の原因のみでなく、精神疾患の発現にメチル化の差異が関わっている可能性が示され、候補遺伝子のマップも可能と考えられたた。これは昨今注目されている、発癌機構と類似するものであり、双生児法が、遺伝子相関・連鎖解析と並んで新しい疾患候補遺伝子マップ法であることを示した。脳画像研究法はヒトの神経系発達研究のブラックボックスに近いので、完成させることは重要である。双生児登録確立の可能性が示された。全体として初期の目的が達成された。

公開日・更新日

公開日
2005-11-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)