免疫難病のシグナル異常と病態解明・治療応用に関する研究

文献情報

文献番号
200400721A
報告書区分
総括
研究課題名
免疫難病のシグナル異常と病態解明・治療応用に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
田中 良哉(産業医科大学医学部第一内科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 梅原 久範(金沢医科大学 血液免疫制御学)
  • 駒形 嘉紀(東京大学医学部付属病院 アレルギーリウマチ内科)
  • 坂口 志文(京都大学再生医科学研究所 生体機能調節学)
  • 高柳 広(東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究所分子細胞機能学)
  • 竹内 勤(埼玉医科大学総合医療センター 第二内科)
  • 田村 直人(順天堂大学医学部 膠原病内科)
  • 西本 憲弘(大阪大学大学院生命機能研究科 免疫制御学講座)
  • 野島 美久(群馬大学大学院医学系研究科 生体統御内科学)
  • 針谷 正祥(東京医科歯科大学医学部 臨床試験管理センター)
  • 南 康博(神戸大学大学院医学研究科 ゲノム科学講座ゲノム制御学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患予防・治療研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
21,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 全身性エリテマトーデス(SLE)をはじめとする膠原病は、多臓器病変を特徴とする全身性自己免疫疾患であり、免疫難病に位置付けられる。本研究では、膠原病の病因や病態形成に本質的に関与する免疫シグナルの異常な賦活化、及び、免疫抑制性シグナルの機能異常を究明し、免疫シグナル異常の是正という視点から疾患制御を追求する事を主目的とする。
研究方法
 膠原病患者リンパ球、動物モデルなどを用い、膠原病の病因や病態形成に直接関与するシグナル伝達分子の異常の蛋白質レベル、遺伝子レベルで特定した。所属施設の倫理委員会の承認を得て、難治性膠原病患者にヒト化抗IL-6受容体抗体を用いた探索的治療研究を行った。
結果と考察
 免疫抑制性シグナルに関しては、SLE患者T細胞にTCRζ鎖のエクソン7を欠く変異が見出され、TCRからの抑制性シグナル伝達に欠損を及ぼす点が示された。さらに、TCRζ鎖の下流のZAP-70遺伝子の変異の結果、胸腺でのT細胞選択異常、関節炎惹起性T細胞の産生がおき、自己免疫疾患の発症に至る事が解明された。
 免疫賦活化シグナル異常に関しては、SLE患者T細胞のTCR共刺激分子賦活化には、β1インテグリンシグナルの亢進によるCD40Lの発現誘導を介したCD28非依存性のシグナルが関与し、自己反応性T細胞の過剰な活性化、ループス腎炎などの臓器病変の進展に寄与する可能性が示唆された。
 免疫シグナル異常の是正に関しては、ノックアウトマウスや患者リンパ球を用いた検討から免疫難病の発症にIL-6が必須である事を解明し、治療抵抗性膠原病症例に対して、ヒト化抗IL-6受容体抗体を使用し、臨床症候や検査成績の速やかな改善を得、血管炎や難治性SLEなどの膠原病の新しい治療法となりうることが示唆された。
結論
 以上、膠原病の発症原因として、T細胞のTCRζ鎖と下流のZAP-70の遺伝子変異による制御性刺激シグナルの欠損の結果、CD29やCD40Lなどの共刺激系のシグナル異常活性化が生じ、自己反応性T細胞活性化を齎し、膠原病を引き起こすことが解明された。更に下流に位置するIL-6を介するシグナルの制御により膠原病の新しい治療法となりうることが示唆された。今後、斯様な結果やコンセプトに基づく免疫シグナル異常の是正は、免疫難病に対する新規治療軸の確立に繋がるものと期待される。

公開日・更新日

公開日
2005-06-06
更新日
-

文献情報

文献番号
200400721B
報告書区分
総合
研究課題名
免疫難病のシグナル異常と病態解明・治療応用に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
田中 良哉(産業医科大学医学部第一内科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 梅原 久範(金沢医科大学 血液免疫制御学)
  • 駒形 嘉紀(東京大学医学部付属病院 アレルギーリウマチ内科)
  • 坂口 志文(京都大学再生医科学研究所 生体機能調節学)
  • 高柳 広(東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究所 分子細胞機能学)
  • 竹内 勤(埼玉医科大学総合医療センター 第二内科)
  • 田村 直人(順天堂大学医学部 膠原病内科)
  • 西本 憲弘(大阪大学大学院生命機能研究所 免疫制御学講座)
  • 野島 美久(群馬大学大学院医学系研究科 生体統御内科学)
  • 針谷 正祥(東京医科歯科大学医学部 臨床試験管理センター)
  • 南 康博(神戸大学大学院医学研究所 ゲノム科学講座ゲノム制御学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患予防・治療研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 全身性エリテマトーデス(SLE)をはじめとする膠原病は、多臓器病変を特徴とする全身性自己免疫疾患であり、免疫難病に位置付けられる。本研究では、膠原病の病因や病態形成に本質的に関与する免疫シグナルの異常な賦活化、及び、免疫抑制性シグナルの機能異常を究明し、免疫シグナル異常の是正という視点から疾患制御を追求する事を主目的とする。
研究方法
 膠原病患者リンパ球、動物モデルなどを用い、膠原病の病因や病態形成に直接関与するシグナル伝達分子の異常の蛋白質レベル、遺伝子レベルで特定した。所属施設の倫理委員会の承認を得て、難治性膠原病患者にヒト化抗IL-6受容体抗体を用いた探索的治療研究を行った。
結果と考察
 免疫抑制性シグナルに関しては、SLE患者T細胞にTCRζ鎖のエクソン7を欠く変異が見出され、TCRからの抑制性シグナル伝達に欠損を及ぼす点が示された。さらに、TCRζ鎖の下流のZAP-70遺伝子の変異の結果、胸腺でのT細胞選択異常、関節炎惹起性T細胞の産生がおき、自己免疫疾患の発症に至る事が解明された。
 免疫賦活化シグナル異常に関しては、SLE患者T細胞のTCR共刺激分子賦活化には、β1インテグリンシグナルの亢進によるCD40Lの発現誘導を介したCD28非依存性のシグナルが関与し、自己反応性T細胞の過剰な活性化、ループス腎炎などの臓器病変の進展に寄与する可能性が示唆された。
 免疫シグナル異常の是正に関しては、ノックアウトマウスや患者リンパ球を用いた検討から免疫難病の発症にIL-6が必須である事を解明し、治療抵抗性膠原病症例に対して、ヒト化抗IL-6受容体抗体を使用し、臨床症候や検査成績の速やかな改善を得、血管炎や難治性SLEなどの膠原病の新しい治療法となりうることが示唆された。
結論
 以上、膠原病の発症原因として、T細胞のTCRζ鎖と下流のZAP-70の遺伝子変異による制御性刺激シグナルの欠損の結果、CD29やCD40Lなどの共刺激系のシグナル異常活性化が生じ、自己反応性T細胞活性化を齎し、膠原病を引き起こすことが解明された。更に下流に位置するIL-6を介するシグナルの制御により膠原病の新しい治療法となりうることが示唆された。今後、斯様な結果やコンセプトに基づく免疫シグナル異常の是正は、免疫難病に対する新規治療軸の確立に繋がるものと期待される。

公開日・更新日

公開日
2005-06-06
更新日
-