皮膚アレルギー炎症発症と治療におけるサイトカイン・ケモカインとその受容体に関する研究

文献情報

文献番号
200400710A
報告書区分
総括
研究課題名
皮膚アレルギー炎症発症と治療におけるサイトカイン・ケモカインとその受容体に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
玉置 邦彦(東京大学大学院医学系研究科皮膚科学)
研究分担者(所属機関)
  • 義江 修(近畿大学医学部細菌学)
  • 師井 洋一(九州大学大学院医学研究院皮膚科学)
  • 中村 晃一郎(福島県立医科大学大学院皮膚・粘膜学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患予防・治療研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
18,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
サイトカイン・ケモカインとその受容体に焦点をあてて皮膚アレルギー炎症機序の解明をめざした。本年は主としてCCL17, CCL26, CCL27, CCL28について研究を展開した。
研究方法
(1) アトピー性皮膚炎(AD)患者や水疱性類天疱瘡(BP)患者におけるCCL28の血清中の値をELISAで検討した。(2) 表皮ケラチノサイト(KC)からのCCL26, CCL27, CCL28産生制御についてHaCaT細胞を用いて検討した。(3) KCに特異的に発現するトランスジェニックマウス(Tg)をCCL17, VEGFについて作成し解析した。(4) ケモカイン受容体を認識する単クローン抗体作成を行った。 (5) 皮膚表皮の海綿状態の発症機序を明らかにするため、HaCaTを用いて表皮シートを作成後、その電気抵抗(イオン透過性)および蛋白透過性を測定した。
結果と考察
(1) ADやBPおよび乾癬患者の血清中でCCL28が高値を示した。CCL28もアレルギー性皮膚疾患に重要な働きをしていると考えられた。(2) HaCaT細胞からのCCL26産生調節にはSTAT6が、CCL27産生調節にはJNK, p38が、CCL28産生調節にはERK, NF-kappaBが各々関与することを示した。 (3) CCL17 TgではTh1型の接触皮膚炎反応反応は抑制され、Th2型の接触皮膚炎反応は増強された。CCL17では一旦炎症がおこるとTh2優位な状態を誘導して炎症を修飾すると考えられた。VEGF Tgマウスの解析からVEGFが炎症細胞浸潤、血管増生を誘導するうえで重要な分子であることが明らかとなった。 (4) マウスのCCR4, CCR6, CCR8およびヒトのCCR10を認識する単クローン抗体を作製することに成功した。これらのレセプター発現細胞の特定と機能解析が現在進行中である。(5) 表皮シートのイオンおよび蛋白透過性の実験から、表皮細胞はIL-4の存在下では細胞間の接着性が減弱するのに対し、IFN-gamma存在下では逆に増強することが明らかとなった。
結論
皮膚アレルギー炎症発症にはCCL17, CCL26, CCL27, CCL28などのケモカインが重要な働きをしていることを明らかにした。このような解析からアレルギー性皮膚疾患の理解がより深まり、さらに新たな治療戦略の開発へと結びついていくものと期待される。

公開日・更新日

公開日
2005-05-12
更新日
-

文献情報

文献番号
200400710B
報告書区分
総合
研究課題名
皮膚アレルギー炎症発症と治療におけるサイトカイン・ケモカインとその受容体に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
玉置 邦彦(東京大学大学院医学系研究科皮膚科学)
研究分担者(所属機関)
  • 義江 修(近畿大学医学部細菌学)
  • 古江 増隆(九州大学大学院医学研究院皮膚科学)
  • 師井 洋一(九州大学大学院医学研究院皮膚科学)
  • 中村 晃一郎(福島県立医科大学大学院皮膚・粘膜学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患予防・治療研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
サイトカイン・ケモカインとその受容体に焦点をあてて皮膚アレルギー炎症機序の解明をめざした。具体的にはCCL17, CCL22, CCL26, CCL27, CCL28などを中心に研究を進めた。
研究方法
(1) アトピー性皮膚炎(AD)患者を中心に血清中のCCL22, CCL26, CCL27, CCL28の値をELISAで検討した。また水疱性類天疱瘡(BP)や菌状息肉症(MF)患者で血清CCL17値を検討した。 (2) 表皮ケラチノサイト(KC)からのCCL17, CCL22, CCL26, CCL27, CCL28産生制御について、主にHaCaT細胞を用いて検討した。 (3) KCに特異的に発現するトランスジェニックマウス(Tg)をCCL17, VEGFについて作成した。(4) AD患者末梢血より単核球を採取しCCL17産生能を検討した。
結果と考察
(1) AD患者では血清中のCCL22, CCL26値が高値を示し、病勢を反映した。CCL27はADおよび乾癬患者の血清で、CCL28はAD, BPおよび乾癬患者の血清で高値を示した。CCL17はBPおよびMF患者の血清で上昇しており、病勢を反映した。 (2) HaCaT細胞からのCCL17, CCL22産生はTNF-alphaとIFN-gammaによって増強され、IL-4により抑制された。HaCaT細胞からのCCL27産生調節にはJNK, p38が、CCL28産生調節にはERK, NF-kBが関与することを示した。 (3) CCL17 TgではTh1型の接触皮膚炎反応反応は抑制され、Th2型の接触皮膚炎反応は増強された。CCL17では一旦炎症がおこるとTh2優位な状態を誘導して炎症を修飾すると考えられた。VEGF Tgマウスの解析からVEGFが炎症細胞浸潤、血管増生を誘導するうえで重要なことを明らかにした。(4) AD患者末梢血由来の単核球が産生するCCL17は、健常人のそれと比較して有意に高く、またステロイド、シクロスポリン、タクロリムスなどの薬剤がCCL17産生を抑制した。
結論
皮膚アレルギー炎症発症にはCCL17, CCL22, CCL26, CCL27, CCL28などのケモカインが重要な働きをしていることを明らかにした。このような解析からアレルギー性皮膚疾患の理解がより深まり、新たな治療戦略の開発へと結びついていくものと期待される。

公開日・更新日

公開日
2005-05-12
更新日
-