輸血後肝炎に関する研究

文献情報

文献番号
200400685A
報告書区分
総括
研究課題名
輸血後肝炎に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
菊地 秀(独立行政法人国立病院機構 仙台医療センター 外科)
研究分担者(所属機関)
  • 稲葉 頌一(神奈川県赤十字血液センター)
  • 枝元 良広(国立国際医療センター 外科)
  • 上司 裕史(独立行政法人国立病院機構 東京病院 消化器科)
  • 清澤 研道(信州大学医学部 第二内科)
  • 小西 奎子(独立行政法人国立病院機構 金沢医療センター 臨床検査科)
  • 佐藤 裕二(北海道大学医学部 第一外科)
  • 鈴木 哲朗(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 瀧本 眞(兵庫県立リハビリテーションセンター リハビリテーション中央病院 麻酔科)
  • 田中 英夫(大阪府立成人病センター 調査部)
  • 中島 一格(日本赤十字社 東京都西血液センター)
  • 藤井 寿一(東京女子医科大学 輸血・細胞プロセシング部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
11,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は過去30数年にわたる輸血後肝炎の発生調査に連なるものであり、その目的は輸血による肝炎を可能な限り減少させて輸血医療の安全性を高めることにある。
研究目標は以下の通りである。
1.輸血後肝炎の発生調査(定点観測)と非B非C型肝炎の解析
2.献血々液におけるNAT(HBV、HCV)の輸血後肝炎の防止対策としての評価
3.献血々液及び輸血患者におけるHEV抗体の検出およびHEVの研究
4.輸血症例におけるTTV感染の解析
5.輸血後急性C型肝炎患者の予後調査
6.HBVキャリアにおける肝細胞癌罹患リスクとその関連要因の解析
(以下の「研究方法」と「結果と考察」における1から6は研究目標の番号である。)
研究方法
1.輸血患者の肝機能を輸血後3ヵ月間以上観察し得た症例を検索症例とし、献血々液と輸血前後の受血者の血液の一部を可能な限り収集保存した。
2.日赤に寄せられた自発報告や遡及調査の結果から輸血後肝炎と思われる症例について、肝炎ウイルスの遺伝子解析を行った。
3.献血々液と輸血患者の輸血前後の保存血清を用いてHEV抗体やHEVを検査した。
4.保存血清を用いてTTVをPCR法により検出し検討した。
5.肝細胞癌患者を対象に、性、年齢、輸血歴、HCC診断までの期間等をcross sectional studyで比較した。
6.HBs抗原が陽性のHBV陽性献血者を対象に、HCC罹患情報を把握して人年法により解析した。
結果と考察
1.班員施設の中では初めて平成16年には輸血後肝炎の発生はなかった。
2.平成16年、日赤に寄せられた感染情報の解析から輸血に起因する肝炎例はHBV 8例とHEV 2例で、感染例はHBV 12例であった。
3.保存血清からは輸血によるHEV感染は認められなかった。
4.TTVは肝炎ウイルスに非ずといわれるが肝障害も起すこともありまだ解明すべき点がある。
5.輸血時年齢からHCC診断時までの期間はy=59.0-0.72x(y:期間年、x:輸血時年齢)で表現された。
6.HBs抗原陽性者の肝細胞癌の年率の罹患率はHBe抗原陽性かつHBe抗体陰性の者で0.513%と最も高かった。
結論
輸血後肝炎の発生は稀となったが全国規模では今なおHBV感染は年間20例ほどありこの傾向は今後も続くものと考える。輸血を受けた患者の追跡調査なしには輸血の安全性も論じられない。従って今後も輸血後肝炎の追跡調査を風化させてはならない。

公開日・更新日

公開日
2005-06-12
更新日
-

文献情報

文献番号
200400685B
報告書区分
総合
研究課題名
輸血後肝炎に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
菊地 秀(独立行政法人国立病院機構 仙台医療センター 外科)
研究分担者(所属機関)
  • 稲葉 頌一(神奈川県赤十字血液センター)
  • 枝元 良広(国立国際医療センター 外科)
  • 上司 裕史(独立行政法人国立病院機構 東京病院)
  • 清澤 研道(信州大学医学部 第二内科)
  • 小西 奎子(独立行政法人国立病院機構 金沢医療センター 臨床検査科)
  • 佐藤 裕二(北海道大学医学部 第一外科)
  • 鈴木 哲朗(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 瀧本 眞(兵庫県立総合リハビリテーションセンターリハビリテーション中央病院 麻酔科)
  • 田中 英夫(大阪府立成人病センター 調査部)
  • 中島 一格(日本赤十字社 東京都西血液センター)
  • 藤井 寿一(東京女子医科大学 輸血・細胞プロセシング部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は過去30数年にわたる輸血後肝炎の発生調査に連なるものであり、その目的は輸血による肝炎を可能な限り減少させて輸血医療の安全性を高めることにある。
 この3年間のおおよその研究目標は以下の通りである。
1.輸血後肝炎の発生調査(定点観測)と非B非C型肝炎の解析
2.献血々液スクリーニングにおけるNAT(HBV、HCV)の評価
3.健常人、献血々液及び輸血患者におけるHEV抗体とHEVの研究
4.輸血とTTV感染
5.輸血後急性C型肝炎患者の予後の検討
6.HCV、HBVキャリアの肝細胞癌罹患リスクとその関連要因
(以下の「研究方法」と「結果と考察」における1から6は研究目標の番号である。)
研究方法
1.輸血患者の肝機能を輸血後3ヵ月間以上観察し得た症例を検索症例とし、献血々液と輸血前後の受血者の血液の一部を可能な限り収集保存した。
2.日赤に寄せられた自発報告や遡及調査の結果から輸血後肝炎と思われる症例について、肝炎ウイルスの遺伝子解析を行った。
3.輸血前後の保存血清を用いてHEV抗体やHEVを検査した。
4.保存血清を用いてTTVをELISA法やPCR法により検出し検討した。
5.輸血後C型肝炎の予後を肝組織の線維化の進行度及び肝細胞癌に至る年月から検討した。
6.献血で見出された40歳以上のHCV、HBVキャリアの肝癌罹患率を比較検討した。
結果と考察
1.班員施設の中での肝炎発生率は0.7%(平成14年)、0.2%(平成15年)、0%(平成16年)で、全て非B非Cであった。
2.この3年間に日赤に寄せられた感染情報の解析から輸血後肝炎例はHBV 25例とHEV 3例、その他1例で、感染例はHBV 15例であった。
3.健常人の中に約0.4%のIgM-HEV抗体が認められたが保存血清からは輸血によるHEV感染は認められなかった。
4.TTVが関与する肝障害は軽度で一過性であった。
5.輸血に起因するC型肝炎は肝硬変に至るまで36.4年、HCC診断時までの期間はy=59.0-0.72x(y:期間年、x:輸血時年齢)で表現された。
6.HBVとHCV両者の重複感染者は単独感染者より肝癌罹患のリスクが高い。
結論
NAT導入後輸血後肝炎の発生は稀となったが、全国的には今後もHBV感染は年間20例ほど発生すると推定される。輸血を受けた患者の追跡調査なしには輸血の安全性も論じられない。従って今後も輸血後肝炎の追跡調査を風化させてはならない。

公開日・更新日

公開日
2005-06-18
更新日
-

研究報告書(紙媒体)