職場における慢性肝炎の増悪要因(化学物質暴露等)及び健康管理に関する研究

文献情報

文献番号
200400684A
報告書区分
総括
研究課題名
職場における慢性肝炎の増悪要因(化学物質暴露等)及び健康管理に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
川本 俊弘(産業医科大学医学部衛生学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 荻野 景規(金沢大学大学院医学系環境生態医学)
  • 藤野 昭宏(産業医科大学医学部医学概論)
  • 杉江 拓也(国立保健医療科学院疫学部)
  • 田原 章成(産業医科大学医学部第三内科学)
  • 田中 純子(広島大学大学院医歯薬総合研究科疫学・疾病制御学)
  • 小山 倫浩(産業医科大学医学部衛生学)
  • 八嶋 康典((財)福岡労働衛生研究所)
  • 奈良井 理恵(産業医科大学医学部衛生学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
2,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 作業関連要因(化学物質暴露、物理的因子、精神的ストレス、作業様態など)と慢性肝炎(特にB型およびC型肝炎)の増悪との関連を科学的に解明し、肝炎労働者(B型・C型肝炎およびキャリアである労働者)に対する適切な健康管理のあり方を検討する。
研究方法
 肝炎労働者(B型:86例、C型:38例)と年齢、性差、アルコール消費量、有害業務をマッチさせた肝炎ウィルス非感染労働者248例に対し、その業務と肝機能マーカー(AST・ALT・γ-GTP)について比較検討した。また、通院中の肝炎労働者を対象として、3年間の追跡調査を行った。平成14、15年度に実施したアンケート結果を参考に、倫理指針および健康管理のあり方を検討した。
結果と考察
 有害業務に従事している肝炎労働者は非有害業務従事の肝炎労働者に比べ肝機能マーカーが高値であった。また、有機溶剤取扱作業従事者の肝機能マーカーは深夜業やその他の作業従事者に比べ、高値傾向を示した。しかし、作業関連要因以外の要因の関与も否定できず、有害業務と慢性肝炎増悪の関係を明らかにすることはできなかった。通院中の肝炎労働者を対象とした追跡調査では、38例中13例(34.2%)に肝炎の急性増悪がみられた。しかし、急性増悪の原因となるような作業関連要因や生活習慣は認められず、また蓄積疲労との関連もみられなかった。さらに倫理指針および「肝炎ウィルスに感染した労働者の健康管理に関する提言」を作成した。
結論
 慢性肝炎の増悪と作業関連要因との関係について明確なエビデンスは認められなかった。また、肝炎ウィルスに感染した労働者の健康管理について下記のように提言をまとめた。
1.肝炎ウィルス保有の有無を知らない労働者は、一度は検査を受けるように努めること。
2.肝炎ウィルス検査の結果は個人情報の中でも特に機微な情報であるので、結果報告には個人情報保護の観点から、特段の配慮がなされること。
3.肝炎に関する健康情報は他の疾患と同様に適切な取り扱いの厳格な実施がなされること。
4.肝炎ウィルスに感染した労働者の健康管理と就業上の措置は、他の疾患と同様に病状に対応して行われること。
5.例外として、感染のリスクの高い業務では、上記1から4とは異なる対応が必要であること。

公開日・更新日

公開日
2005-06-15
更新日
-

文献情報

文献番号
200400684B
報告書区分
総合
研究課題名
職場における慢性肝炎の増悪要因(化学物質暴露等)及び健康管理に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
川本 俊弘(産業医科大学医学部衛生学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 荻野 景規(金沢大学大学院医学系研究科環境生態医学)
  • 小山 倫浩(産業医科大学医学部衛生学)
  • 佐栁 進(国立下関病院)
  • 杉江 拓也(国立保健医療科学院)
  • 田中 純子(広島大学大学院医歯薬総合研究科疫学・疾病制御学)
  • 田原 章成(産業医科大学医学部第三内科学)
  • 藤野 昭宏(産業医科大学医学部医学概論)
  • 堀江 正知(産業医科大学産業生態科学研究所)
  • 桝元 武(三菱化学㈱鹿島事業所)
  • 八嶋 康典((財)福岡労働衛生研究所)
  • 奈良井 理恵(産業医科大学医学部衛生学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 作業関連要因(化学物質暴露、物理的因子、精神的ストレス、作業様態など)と慢性肝炎(特にB型およびC型肝炎)の増悪との関連を科学的に解明し、肝炎労働者(B型・C型肝炎およびキャリアである労働者)に対する適切な健康管理のあり方を検討する。
研究方法
 産業医を対象としたアンケート、肝炎労働者を対象としたアンケート、労働衛生機関におけるレトロスペクティブな検討、バイオマーカーを利用した調査および通院中の肝炎労働者を対象とした追跡調査の5つの調査研究により作業関連要因と慢性肝炎の増悪(あるいは発症)との関係について検討した。また、倫理に関する調査および肝炎労働者の健康管理に関する提言(案)のアンケートを参考にして、健康管理のあり方を検討した。
結果と考察
 調査対象集団(142,703名)の約1.2%が肝炎労働者として産業医に把握されていた。このうち約3割が有害業務に従事しており、就業制限や配置転換の指導がなされているものが5%いた。通院中の労働者の約3割に肝炎の急性増悪がみられたが、増悪の原因となるような作業関連要因や生活習慣は認められなかった。有害業務従事の肝炎労働者は、非従事肝炎労働者より血清トランスアミナーゼ値が高値であったが、作業関連要因以外の関与も否定できなかった。また、倫理指針を提案するとともに、下記の提言を作成した。
1.肝炎ウィルス保有の有無を知らない労働者は、一度は検査を受けるように努めること。
2.肝炎ウィルス検査の結果は個人情報の中でも特に機微な情報であるので、結果報告には個人情報保護の観点から、特段の配慮がなされること。
3.肝炎に関する健康情報は他の疾患と同様に適切な取り扱いの厳格な実施がなされること。
4.肝炎ウィルスに感染した労働者の健康管理と就業上の措置は、他の疾患と同様に病状に対応して行われること。
5.例外として、感染のリスクの高い業務では、上記1から4とは異なる対応が必要であること。
結論
 慢性肝炎の増悪と作業関連要因との関係について明確なエビデンスは認められなかった。また、肝炎ウィルスに感染した労働者の健康管理に関する提言を作成した。本提言は、「職場における肝炎ウィルス感染に関する留意事項」(平成16年12月8日、基発第1208004号)作成における参考資料となった。

公開日・更新日

公開日
2005-06-15
更新日
-