文献情報
文献番号
200400681A
報告書区分
総括
研究課題名
肝炎ウイルスによる宿主細胞のがん化メカニズムの解明に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 宣之(岡山大学大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
- 下遠野 邦忠(京都大学ウイルス研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成14(2002)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
13,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
研究目的=本研究ではHCVの肝がん発症への関与を実験的に検証し、肝発がんのメカニズムの解明に迫るとともに、得られた研究成果を肝発がんの予防に役立てることを目的としている。最終年度である本年度は以下に示す実験を行い、幾つかの研究成果を得た。
研究方法
(1)細胞内でのHCV RNAの複製増殖レベルを定量化する方法の開発を試みる。
(2)前年度までに得られたインターフェロン(IFN)抵抗性HCVレプリコン細胞を用いてIFN抵抗性獲得機序の解析を行う。自然免疫系の宿主因子とHCV増殖制御との関係を解析する。(3)HCVレプリコン細胞や全長HCVRNA複製細胞を用いて、HCVの新規増殖抑制剤の探索を行う。
(2)前年度までに得られたインターフェロン(IFN)抵抗性HCVレプリコン細胞を用いてIFN抵抗性獲得機序の解析を行う。自然免疫系の宿主因子とHCV増殖制御との関係を解析する。(3)HCVレプリコン細胞や全長HCVRNA複製細胞を用いて、HCVの新規増殖抑制剤の探索を行う。
結果と考察
(1)全長HCVRNAが効率良く細胞内で複製している細胞株を樹立した。このHCVRNAにさらにルシフェラーゼ遺伝子を組み込んだRNAが効率よく複製している細胞株も樹立し、HCVRNAの複製レベルを定量的にモニターできるシステムを開発した。また、マウスを用いてHCVRNAの複製を定量化できる方法を開発した。これらの方法は抗HCV作用をモニターするための必須の系であると考えられる。(2)IFN抵抗性レプリコン細胞(部分抵抗性と完全抵抗性)を用いて解析した結果、IFN抵抗性の獲得には宿主側因子の変化が寄与していることが判った。完全抵抗性を示すレプリコン細胞ではIFN受容体の異常が生じ、機能欠損型になっていることを明らかにした。自然免疫を調節する細胞側因子であるTLR3がHCVの増殖制御に重要であることを見出した。これらの分子機構の解明はIFN療法をさらに有効にするために重要な情報を与えるものと考えられる。(3)HCVの新規増殖抑制剤としてTGF-βとリウマチ薬などとして既に用いられているミゾリビンを見出した。ミゾリビンについては、リバビリンに認められるような貧血などの副作用も少ないことから、高齢者を中心にした早期の臨床応用が期待される。
結論
(1)細胞内でのHCV RNAの複製増殖レベルを定量的にモニターできる方法を開発した。(2)IFN抵抗性獲得機序の一部を解明した。HCV増殖とTLR3との関係を明らかにした(3)抗HCV作用を示す新規薬剤としてTGF-βとミゾリビンを見出した。
公開日・更新日
公開日
2005-06-15
更新日
-