本邦に於けるE型肝炎の診断・予防・疫学に関する研究

文献情報

文献番号
200400676A
報告書区分
総括
研究課題名
本邦に於けるE型肝炎の診断・予防・疫学に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
三代 俊治(東芝病院(研究部))
研究分担者(所属機関)
  • 今井 光信(神奈川県衛生研究所(微生物部))
  • 金光 公浩(日本赤十字社(血液事業部検査品質管理))
  • 前久保 博士(手稲渓仁会病院(消化器病))
  • 溝上 雅史(名古屋市立大学大学院(臨床分子情報医学))
  • 持田 智(埼玉医科大学(肝臓内科))
  • 岡本 宏明(自治医科大学(感染免疫学講座ウイルス学部門))
  • 武田 直和(国立感染症研究所(ウイルス第二部))
  • 津田 新哉(中央農業総合研究センター(病害防除部ウイルス病害研究室))
  • 山口 成夫(動物衛生研究所(感染病研究部))
  • 矢野 公士(国立病院長崎医療センター(臨床研究センター))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
28,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我国に於ける感染実態の把握。日本土着株の遺伝的特徴の解明。診断系の評価・改良。感染経路の解明。人畜共通感染症的側面の真偽の検討。輸血を介する感染のリスク評価。有効なワクチンを開発する為の基礎研究。
研究方法
単に症例の発掘のみに留めず『ウイルス株の発掘』にも努めた。全国集計的な疫学調査を行うと同時に,多発地に於ける定点観測的な調査をも行った。供血者集団の感染状況も調査した。野生動物に於ける感染状況も調査した。診断系の改良とワクチン開発を目指して様々のウイルス蛋白発現を試みた。IgA抗体検出系を作製した。HEVに対する細胞性免疫応答をin vitroで見る系の作成を試みた。
結果と考察
計193例の感染例を全国から蒐集し、[1-i] 男性に多発(男女比4:1)、[1-ii] 中高年層に多発(平均年齢51歳)し且つ加齢と肝炎重症度が正相関する、[1-iii] 明白な季節性は無い、[1-iv] 北海道に多発するが全国的に存在する、[1-v] genotypeと重症度が相関する、[1-vi] 推定感染経路は血行性2%、輸入 8%、動物由来26%、不明64%である、等の所見を得た。野生動物については、[2-i] 宮崎、長崎、愛媛、兵庫、和歌山、長野、及び関東の猪から、HEV RNAと抗体が檢出された。 [2-ii] 兵庫と栃木と北海道の鹿からもHEV RNAあるいは抗体が檢出されたが、その頻度は猪のそれより有意に低かった。他に特筆すべき研究成果としては、[3] HEVが我国に土着化したのは1900年前後であり、以後は緩徐な拡散を示したが、genotype IVは最近になって拡散速度が増加したと示唆する分子時計法による解析結果、[4-i] 従来のIgM抗体檢出系に較べれば感度及び特異性共に優れたIgA抗体檢出系の開發、[4-ii] HEV特異T 細胞の檢出系の作製、[5] 献血者に於ける全国規模の感染実態調査の実施、[6] 従来のVLPより大きい実物ウイルス大VLP作製の成功、等を挙げることができる。
結論
我国でこれまで経験された症例の半数以上が『感染経路不明』である故、我々が未だ知り得ていない感染源・感染経路に関する更なる研究が必要である。特に、豚、猪、鹿以外の動物に於ける感染実態調査が急がれる。診断系改良とワクチン開発の為にも更なる努力が必要である。ALT値正常献血者に於けるHEV RNA保有率の全国調査も急がれる。

公開日・更新日

公開日
2005-06-27
更新日
-