予後改善を目指した肝臓がん再発に影響を与える因子に関する研究

文献情報

文献番号
200400675A
報告書区分
総括
研究課題名
予後改善を目指した肝臓がん再発に影響を与える因子に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
小俣 政男(東京大学医学部附属病院(消化器内科))
研究分担者(所属機関)
  • 椎名 秀一朗(東京大学医学部附属病院(消化器内科))
  • 金井 文彦(東京大学医学部附属病院(臨床試験部))
  • 白鳥 康史(岡山大学大学院(消化器・肝臓・感染症内科))
  • 石橋 大海(国立病院長崎医療センター(臨床研究センター))
  • 村松 正明(ヒュービットジェノミクス(株))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
19,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在の肝癌患者の5年生存率は40%前後である.本研究ではその予後を5年生存率で70%に上昇させる事を目的とする.それを阻む最大の原因は年15-20%に及ぶ肝癌の治療後再発であり,本研究ではその背景因子を明らかにし,対策を講じる.
研究方法
1.肝癌再発要因の臨床的解析
局所焼灼療法により原発巣を根治し得たC型肝癌患者632名を対象とし,累積肝内再発を数学的モデルにて解析した.また,内科的な肝癌治療がなされた792名の肝癌患者を対象とし,各種臨床的パラメータから肝癌再発に関与する要因を検討した.また,肝癌患者1077名につき,治療後の腫瘍マーカー陰性化の有無による再発率を比較検討した.

2.肝発癌の遺伝的背景の解析
B型肝炎患者236名(うち肝癌合併48名)において,4サイトカインの合計7か所の遺伝子多型を検討した.また,C型肝炎者376名(うち肝癌合併170名)については,まず188名について172遺伝子394SNPにつき検討し,31SNPを抽出し,新たな188名について同様に検討した.

3.再発予防の対策
再発予防効果の示されている非環式レチノイドの肝細胞増殖抑制機構につき検討した.
結果と考察
1.肝癌再発要因の臨床的解析
C型肝癌患者の治療後再発を解析し,背景肝からの新規再発が年18%であること,微小肝内転移からの再発は原発巣の大きさと腫瘍数に規定され,2 cm以下の単発癌では稀だが,3 cm,3個を超える場合は50%以上の症例に肝内転移があったと推定した.また,早期再発には原発巣の大きさと腫瘍数が寄与し,後期再発には背景肝因子が関与することを示した.また,治療後のPIVKA-II陰性化の有無が治療後再発に関連することを示した.

2.肝発癌の遺伝的背景の解析
B型肝炎患者についてTGF-βのジェノタイプが肝癌と関連していることを示した.また,C型肝炎患者については,肝癌と関連する3SNPを見出した.

3.再発予防の対策
非環式レチノイドの肝癌細胞増殖抑制機構を明らかにした.
結論
肝癌再発要因の臨床的解析から,肝癌の治療後再発において背景肝からの新規発癌と微小肝内転移残存の両者が関与することを示した.新規発癌に関しては抗ウイルス療法がその抑止に有効であり,また,肝内転移による再発に関しては,非環式レチノイドの投与がアジュバント療法として有効であると期待される.

公開日・更新日

公開日
2005-04-08
更新日
-