計算機を活用したHIVの薬剤耐性評価

文献情報

文献番号
200400662A
報告書区分
総括
研究課題名
計算機を活用したHIVの薬剤耐性評価
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
星野 忠次(千葉大学(大学院薬学研究部))
研究分担者(所属機関)
  • 畑 晶之(千葉大学(大学院薬学研究部))
  • 佐藤 武幸(千葉大学(医学部附属病院))
  • 杉浦 亙(国立感染症研究所(エイズ研究センター))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、ジェノタイプ検査やフェノタイプ検査に並ぶ新しい薬剤耐性検査法として、「コンピュテーショナル検査」を提案した。抗HIV認可薬のうち、個々の患者にとって最も適した薬剤を選択できる技術の実現を目指す。この技術の実現に向け、既存のフェノタイプ検査法の結果と比較して、計算評価法の信頼性の確認を行う。
研究方法
従来のジェノタイプ検査やフェノタイプ検査と照らし合わして、計算機で算出した値が、実験的測定値と整合性があるかを詳細に調べるために、「フェノタイプ検査が既知のデータを照合例として選別し」、「変異情報から検体固有の酵素を計算機内で仮想的に作成し、薬剤との結合構造を構築し」、「薬剤と酵素の結合力の算出と薬剤抵抗性の評価」、「計算機算出値と実験データとの比較」を行う。
結果と考察
検査会社(Virco)によりフェノタイプ検査の行われた検体のうち、計算が実行しやすいことならびにジェノタイプ検査だけの結果のみでは十分に耐性度が推定できないことから、本研究ではプロテアーゼ阻害剤に絞り研究を進めた。臨床検体から分離された一つのHIV-1プロテアーゼ株につき、現在国内で認可されている7つのプロテアーゼ阻害剤との結合親和性を順次に求め、10検体について計算を実施した。その結果、エネルギー評価法と構造変化評価は、検体によっては、フェノタイプの耐性検査との間に十分な整合性を示した。エネルギー評価法で4例、構造変化評価法で6例が整合性のある結果を与えた。10検体のうち、エネルギー評価法で整合性の悪かった検体は、構造変化評価法では良好な整合性を示した。また逆に構造変化評価法であまり整合性が良くない検体は、エネルギー評価法で良い整合性を示した。結局、エネルギーと構造変化は相反し、計算評価は相互に補完するので、両者を併用すると予測精度が向上するということが判明した。
結論
エネルギー評価法では、実験室株ならびにインジナビルを除くプロテアーゼ阻害剤について、一部の検体について、計算機による親和性の算出値と実験による測定値の間の整合性がみられるようになった。構造変化評価法でも、一部の検体に対して良好な整合性を示した。両者を併用すると予測精度が著しく向上するということがわかった。今後、評価法をさらに改良し、プロテアーゼ阻害剤について、短時間で臨床検体に対し十分に信頼性の高い予測ができるようにする必要がある。

公開日・更新日

公開日
2005-05-13
更新日
-

文献情報

文献番号
200400662B
報告書区分
総合
研究課題名
計算機を活用したHIVの薬剤耐性評価
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
星野 忠次(千葉大学(大学院薬学研究部))
研究分担者(所属機関)
  • 畑 晶之(千葉大学(大学院薬学研究部))
  • 佐藤 武幸(千葉大学(医学部附属病院))
  • 杉浦 亙(国立感染症研究所(エイズ研究センター))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成16(2004)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ウィルスが薬剤抵抗性を獲得し、耐性ウィルスが発生してしまうことが、HIV感染症治療では深刻な問題となっている。そこでHIV感染患者に薬を投与する前に、予め薬剤耐性検査を行うことが、抗HIV療法をより充実させるために重要である。本研究では、ジェノタイプ検査やフェノタイプ検査に並ぶ新しい薬剤耐性検査法として、コンピュテーショナル検査を提案し、実用化に向けた研究開発を行う。
研究方法
方法論の開拓については、「計算評価法改良と計算機プログラムの作成」ならびに「計算の迅速化に向けたソフトウェア開発」を行う。臨床実験データとの整合性確認については、「フェノタイプ検査が既知のデータを照合例として選別し」、「変異情報から検体固有の酵素を計算機内で仮想的に作成し、薬剤との結合構造を構築し」、「薬剤と酵素の結合力の算出と薬剤抵抗性の評価」および「計算機算出値と実験データとの比較」を行う。
結果と考察
ソフトウェア開発に関しては、薬剤耐性の予測法として、薬と標的酵素の結合エネルギーから評価する方法、反応ポケットの歪みと反応ポケットの構造変化を測定する方法、さらに接合面のゆらぎ具合から推定する方法の3つを開発した。このうち、エネルギー評価法と構造変化評価は、検体によっては、フェノタイプの耐性検査との間に十分な整合性を示した。臨床検体から分離された一つのHIV-1プロテアーゼ株につき、現在国内で認可されている7つのプロテアーゼ阻害剤との結合親和性を順次に求め、10検体について計算を実施した。これらの検体は全て検査会社(Virco)によりフェノタイプ検査が行われており、計算結果と実験結果が比較できる。エネルギー評価法で4例、構造変化評価法で6例が整合性のある結果を与えた。エネルギー評価法で整合性の悪かった検体は、構造変化評価法では良好な整合性を示し、逆に構造変化評価法で整合性が良くない検体は、エネルギー評価法で良い整合性を示した。つまりエネルギーと構造変化は相互に補完し、両者を併用すると予測精度が向上した。ウィルスの塩基配列から変異型酵素モデルのアミノ酸配列を決定する部分や、エネルギーや構造変化およびゆらぎ解析から結合親和性評価を行う部分では、幾つかの独自ソフトウェアが作成された。
結論
薬剤抵抗性評価に用いるソフトウェアの開発には、一定の成果があった。エネルギー評価法と構造変化評価法を併用すると十分な予測が得られる。

公開日・更新日

公開日
2005-05-20
更新日
-