HIV潜伏感染・再活性化のエピジェネティック制御機構を標的とした根治療法開発の基礎研究

文献情報

文献番号
200400652A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV潜伏感染・再活性化のエピジェネティック制御機構を標的とした根治療法開発の基礎研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
渡邉 俊樹(東京大学大学院 新領域創成科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 石田 尚臣(東京大学大学院 新領域創成科学研究科)
  • 堀江 良一(北里大学 医学部 第4内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
14,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HAART療法導入後直ちに明らかになった、HIVの潜伏感染リザーバーの存在と既存の治療法に対するその抵抗性は、AIDS治療に対する楽観論を一掃した。しかし、現在に至るまで潜伏感染HIVに対する有効な治療戦略は未だに存在せず、感染個体からのHIVの排除、再発を防止することは未だに困難である。従って、HIV潜伏感染と再活性化の制御機構の理解を基盤とした根治療法の戦略を可能にする基礎的知見を得ることは急務である。本研究計画は、ウイルス遺伝子発現のエピジェネティックス制御という観点から、潜伏感染HIVの制御を目指した根治療法開発の基礎となる知見を明らかにすることを目的とする。
研究方法
本年度は以下の2点について検討した。
1. in vivoリザーバープールのHIVプロウイルスLTRのDNAメチル化の有無を、シドニーのCooper博士らのコホートで集積されている検体を用いて明らかにする。
2. 新規NF-κB阻害剤を利用した、潜伏・再活性化のエピジェネティックス制御の試みを検討し、HIV-1複製に与える効果を検討する。
結果と考察
1. シドニーコホート検体を用いたin vivoメチル化解析の結果、HIV感染患者のPBMCにおいて、メチル化されたプロウイルスLTRを世界に先駆けて検出した。メチル化シトシンはnon-CpG配列のメチル化であった。メチル化がHIVウイルス遺伝子の発現抑制に関与しているかについては、今後の課題である。メチル化シトシンがnon-CpG配列で見いだされた事から、de novo DNAメチル化酵素、Dnmt3の関与が強く示唆され、治療の標的分子の候補となる可能性もある。
2. 新規NF-κB阻害剤は、in vitroの感染実験系において、HIV-1の複製を阻害する事が明らかとなった。新たな治療薬として十分検討の余地があり、今後詳細な解析を行う。さらに、本薬剤はエイズリンパ腫のモデル細胞の増殖を完全に抑制し、細胞死を誘導した。本薬剤は、HIV感染症の新たな治療薬として検討できると思われる。
結論
1. シドニーコホート検体のメチル化解析から、HIV感染患者の感染細胞中にもメチル化LTRが存在する。
2. 感染患者検体で認められたメチル化シトシンは、non-CpG配列のメチル化である。
3. プロウイルスLTRのメチル化はde novo DNAメチル化酵素が関与することが強く示唆された。
4. 新規NF-κB阻害剤はHIV-1の複製を抑制する。エイズリンフォーマのモデル細胞の増殖を強く抑制し、細胞死を誘導する。

公開日・更新日

公開日
2005-05-13
更新日
-