エイズ脳症の発症病態と治療法に関する研究

文献情報

文献番号
200400644A
報告書区分
総括
研究課題名
エイズ脳症の発症病態と治療法に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
出雲 周二(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科難治ウイルス病態制御研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 森 一泰(国立感染症研究所エイズ研究センター)
  • 岸田 修二(東京都立駒込病院神経内科)
  • 船田 信顕(東京都立駒込病院病理科)
  • 馬場 昌範(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科難治ウイルス病態制御研究センター)
  • 宇宿功市郎(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科)
  • 清島 満(岐阜大学大学院医学研究科)
  • 高宗暢暁(熊本大学大学院医学薬学研究科)
  • 木戸 博(徳島大学分子酵素学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
37,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本邦ではHIV新規感染者は増加の傾向が続いており、HAARTによる感染者の長期生存と合わせて、HIV脳症への対応はエイズ対策の中での緊急の課題の一つとなっている。本研究では、これまでの研究成果である「HIV脳症には独立した二つの神経傷害機構が存在する」という視点で、①我国でのHAART導入後のHIV脳症及び他の神経合併症の詳細な実態を明らかにする、②それぞれの病態の発症機序を明らかにし、病態に則した診断法・治療法の開発を目指す、③増加が予想されるHIV感染者の将来の神経系病態を予測し、HIV脳症発症予防の方策を探ることを目的とした。
研究方法
1)エイズ脳症の臨床病態、特に本邦HIV脳症を含む神経合併症の動向、2)剖検例を用いた発症病態の解析、3)エイズ動物モデルを用いた発症病態の解明、 4)in vitroの系を用いた発症病態の解明、5)中枢神経障害予防治療薬の開発、6)HIV脳症発症に関連する内的・外的要因の解析、の研究テーマを設定し、分担研究を行った。
結果と考察
第2次全国疫学調査を実施し、HAART治療下でHIV関連疾患が減少する中、神経合併症の相対的頻度が増している実態が明らかとなった。HIV脳症自体は減少しているが、緩徐進行性潜在性の病態をとることを予想しており、神経内科医、精神科医によるより詳細な観察が必要である。一方で、HAART治療下で免疫不全の進行を伴わずにサイトメガロウイルス脳炎、PML、脳原発悪性リンパ腫が発症しており、今後注意深い観察と対策が必要である。調査の回答率をさらにあげて、我が国のエイズ神経合併症の全体像を明らかにし、将来の神経系病態の予測と発症予防法の開発に寄与していく。剖検例についてはウィーン大学症例、駒込病院剖検例の解析がすすみ、ヒトにおいてもHIV脳炎と大脳皮質の変性病態は独立して生じていることが示唆された。症例を増やして検討していく。大脳皮質の変性病態にはアストロサイトの傷害が重要であることを示す所見が、剖検例の解析、in vitroの解析からから得られており、発症病態の解明へつながる成果である。病態に関与し、治療の標的分子の候補としてTatの亜鉛結合cysteine-rich domain、14-3-3蛋白、インドールアミン2,3ジオキシゲナーゼ、N-ミリストイル転移酵素、TNF-αがリストアップされており、治療薬の開発につなげたい。
結論
HAART治療下で神経合併症の相対的頻度が増している。
ヒトにおいてもHIV脳炎と大脳皮質の変性病態は独立して生じている。
大脳皮質の変性病態にはアストロサイトの傷害が重要である。

公開日・更新日

公開日
2005-06-09
更新日
-