HIV感染症の治療開発に関する研究

文献情報

文献番号
200400643A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染症の治療開発に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 則子(名古屋市立大学大学院(医学研究科))
研究分担者(所属機関)
  • 金田 次弘(国立病院機構名古屋医療センター (臨床研究センター))
  • 岡田 秀親(福祉村病院長寿医学研究所 (研究部))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
11,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV感染細胞に反応するIgM抗体が長期生存患者に高く存在することを知った。そこで、感染細胞特異的に反応するヒトIgMモノクローナル抗体(9F11など)を作成した。これらのヒト抗体はHIV感染株化培養細胞に補体反応依存性の細胞傷害を誘導する。そこで、これらのヒト抗体がHIV感染患者の血液中に含まれる感染細胞や潜伏感染細胞を排除して抗HIV効果を発揮することを検証する。IgM抗体の有効性とともに安定性や安全性をも考慮して、IgM抗体によるHIV感染症に対する新しい治療法の可能性を検証する。
研究方法
1 9F11を感染細胞に反応させ抗原分子の同定を精製分離した抗原断片のアミノ酸配列を解析して試みた。2 HIV感染患者末梢血CD4陽性細胞での9F11抗原の分布と発現の有無を蛍光抗体法で解析した。HIV感染患者の末梢血CD4リンパ球の初代培養に9F11と新鮮ヒト血清を補体源として添加し感染拡大の抑制をP24のELISA定量や、HIVmRNAのリアルタイムPCR法で解析した。3 細胞膜上Nefに反応するヒトIgMモノクローナル抗体CF8などのペプチドアレイ法を用いてNefエピトープを解析した。4 過剰な補体反応による副作用に対処するためにC5a阻害ペプチドを開発し効果検討も行った。5 IgM抗体を大量に作製精製し、安定的保存法などの検討を行った。
結果と考察
1 9F11抗原を精製し、N末アミノ酸配列を解析した結果、データベースには存在せず新規タンパク質の可能性が示唆された。2 HIV感染患者末梢血に9F11抗原陽性細胞の増加が認められ、抗原陽性率はCD4リンパ球数との間で逆相関を認めた。3 HIV感染患者血液から分離したリンパ球分画にヒトIgM抗体9F11を新鮮ヒト血清補体と共に加えて初代培養を行い上清中のP24を定量する解析で、HIV感染細胞をほぼ完全に排除できた症例が多かったが、抵抗性の症例も認めた。4 IgM抗体精製には、適宜安定化剤を使用することなどで、高純度高濃度の抗体精製法が検討できた。患者末梢血中の感染細胞を9F11と血清補体との処理で初代培養を行うと、多くの場合でHIV産生量を激減できたので治療への応用が期待される。
結論
 IgM抗体が有用である可能性が高まった。感染患者の末梢血リンパ球初代培養に対する有効性が認められたことは心強い。IgM抗体治療の有用性が高まり、社会的意義も大きい成果と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2005-05-13
更新日
-