HIV-1遺伝子を広域に持つ新規SHIVとサルを用いたエイズ治療薬開発の研究

文献情報

文献番号
200400642A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV-1遺伝子を広域に持つ新規SHIVとサルを用いたエイズ治療薬開発の研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
井戸 栄治(京都大学ウイルス研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 伊吹 謙太郎(京都大学ウイルス研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、先ず、前臨床の基礎研究として、人に近い動物であるサルを用いてエイズ治療法を実験的に開拓するモデル系を確立することを目的とする。次にその系を用いて、種々の薬剤や新たな治療法の効果判定を行い、人のためのより良い治療法を提示することを最終目標とする。
研究方法
従来サル感染実験に用いられたSHIVは、主にenv遺伝子のみがHIV-1由来で、人への治療薬の効果判定に適してはいない。なぜなら、市販されているウイルス複製阻害剤の中には、NNRTIのようにHIV-1のpol遺伝子産物を特異的に標的としているものが多いからである。そこで我々は、pol遺伝子がHIV-1由来である新規のSHIVを作成することにした。今年度は、以下に述べる2項目に重点を置いて研究を行った。
結果と考察
1) SHIV-rti/3rnのサル細胞馴化にともなって生じた変異の解析
 RTとINT領域及びenvをHIV-1由来にするSHIV-rti/3rnはアカゲザルに感染する。このウイルスは当初サルPBMCでの増殖がよくなく、サル細胞で26週間継代して作成したものである。配列分析の結果、継代前後ではゲノム全体に渡って11ヶ所の変異が認められた。各々の変異を導入したフルゲノムプラスミドを作成して増殖性能を調べた結果、この内GagのCA領域とgp41領域、都合2ヶ所の変異がサル細胞における馴化に最も寄与していることが判明した。
2) SHIVの持続感染に与えるIL-15の治療効果の検討
 ヒト精製IL-15を、in vitroでヒト並びにアカゲザルPBMCの培養液中に添加すると、24時間以内にNK活性が顕著に上昇し、この活性の昂進は比較的長期間持続することが分かった。そこでSHIV89.6pが持続感染しているアカゲザル2頭に、IL-15を1回当たり5μg、隔日で4回血中に投与したところ、2頭共に一過的なNK活性の上昇が見られ、内1頭では血中ウイルス量がone order減少することを観察した。
結論
これまでで最もHIV-1の領域が広いSHIVが分子クローンの形で得られたことは、新規のSHIVとサルを用いた新しいモデル系が開拓されたものとして意義は大きい。またIL-15のように、従来のウイルス増殖阻害剤とは作用機構が全く異なる物質が、新たにエイズ治療薬としての可能性があることを示した点は一つの大きな前進である。

公開日・更新日

公開日
2005-05-13
更新日
-