感染症媒介ベクターの実態、生息防止対策に関する研究

文献情報

文献番号
200400621A
報告書区分
総括
研究課題名
感染症媒介ベクターの実態、生息防止対策に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
小林 睦生(国立感染症研究所昆虫医科学部)
研究分担者(所属機関)
  • 津田 良夫(国立感染症研究所昆虫医科学部)
  • 沢辺 京子(国立感染症研究所昆虫医科学部)
  • 冨田 隆史(国立感染症研究所昆虫医科学部)
  • 高崎 智彦(国立感染症研究所昆虫医科学部)
  • 松岡 裕之(自治医科大学医動物学教室)
  • 新庄 五郎((財)日本環境衛生センター環境生物部)
  • 當間 孝子(琉球大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
24,603,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
都市部でどのような種類の蚊がどの程度発生しているか知られていない。そこで、都市部を中心に幼虫発生源調査、トラップによる成虫捕集調査を行い、媒介蚊防除対策の基礎的データの蓄積を行う。また、成田空港周辺および首都圏で捕集された蚊からフラビウイルスの検出および分離を試みる。捕集蚊の腹部に残存する血液から吸血源動物の分子同定を行い、アカイエカ種群の吸血嗜好性を明らかにする。また、アカイエカ種群の分子同定法を確立し、都市部でのチカイエカの行動を明らかにする。都市部で採集された幼虫を用い、殺虫剤抵抗性の発達状態を調べ、緊急時の薬剤選択の根拠とする。
研究方法
蚊成虫は主にドライアイストラップで捕集し、幼虫は発生源の状態を記録し、採集後同定を行った。ウイルスの検出は細胞培養法、RT-PCR法を組み合わせて行い、遺伝子解析でウイルスの同定を行った。吸血源動物の同定、アカイエカ種群の同定はPCR法および遺伝子解析で行った。
結果と考察
都市部の捕集蚊はアカイエカとヒトスジシマカが全体の90%以上を占めたが、捕集数はトラップ設置環境で大きく異なった。幼虫の主要な発生源は雨水マスで、両種が混在する例が多く見られた。フラビウイルスの分離では、アカイエカからJEウイルスおよび未知のフラビウイルスが検出され、ウイルスの解析を継続して行っている。吸血源動物の分子同定では、アカイエカ種群が野鳥および人から活発に吸血する傾向が示された。また、アカイエカ種群の分子同定に成功し、チカイエカが開放空間で多数捕集されることが明らかになった。幼虫の殺虫剤抵抗性に関しては、一部ピレスロイド系の薬剤に抵抗性の発達が認められ、抵抗性機構の遺伝子解析を行った。
結論
都市部の蚊の発生状況調査を行い、アカイエカとヒトスジシマカの2種がトラップで捕集され、幼虫も居住地域内に多数存在する雨水マスに発生していることが示された。アカイエカ種群を分子同定し、チカイエカが開放空間で活発に活動していることが明らかとなった。吸血源動物の分子同定では、チトクロームb遺伝子の解読により種を特定し、アカイエカおよびチカイエカが野鳥(特にカモ類とスズメ類)および人から吸血する傾向が高いことが示された。これらの結果は、ウエストナイルウイルスが我が国に移入された場合、都市部において広範に流行が起こる可能性を示しており、平時からの幼虫対策が重要であることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2005-04-13
更新日
-