院内感染の発症リスクの評価及び効果的な対策システムの開発に関する研究

文献情報

文献番号
200400614A
報告書区分
総括
研究課題名
院内感染の発症リスクの評価及び効果的な対策システムの開発に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成16(2004)年度
研究代表者(所属機関)
倉辻 忠俊(国立国際医療センター研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 切替 照雄(国立国際医療センター研究所)
  • 荒川 宜親 (国立感染症研究所 )
  • 宮崎 久義(国立病院機構熊本医療センター)
  • 人見 重美(筑波大学臨床医学系 感染制御部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成15(2003)年度
研究終了予定年度
平成17(2005)年度
研究費
17,850,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
院内感染は医療事故の一つであるが、どんなに細心の注意を払っても完全には防止できない。また、施設のタイプや規模によっても院内感染の発症は異なる。本研究は、院内感染のハイリスクポイントを再評価する、チェックリストやフローチャートにより誰でもが適正な判断及び行動の選択ができるような手順書を開発・改善する、院内感染事例の感染疫学、微生物のゲノム疫学分析を行いエビデンスに基づいた対策を開発する、海外文献のメタアナリシスにより、必要な対策を追加する、などにより国民に安全な医療を提供できる環境を整備することを目的とした。
研究方法
(1)国立病院機構15施設の協力により、施設のタイプ、規模によるハイリスク季節、場所、時間帯、医療・介助行為、職種などを再評価し、HACCPに倣い、院内感染防止手順を再点検し、改良する。(2)ハイリスクに基づいてターゲットサーベイランスを実施し、その効果を評価する。(3)スクリーニング及び院内感染事例のMRSA等のゲノム疫学解析を行い、対策を提案する。(4)海外諸文献をメタアナリシスし、必要な対策を提言する。
結果と考察
(1)国立病院機構15施設が既刊の「院内感染防止手順」を使用、再点検すると共に、ハイリスクポイントを再評価した。4-6月時の針刺し事故防止強化月間、教育研修、教材開発を行い、効果をあげた。(2)10-3月に急性呼吸器症状サーベイランスを施行し、インフルエンザ予防接種奨励等意識強化し、効果を上げた。(3)MRSAはクラスターA群が施設に長期停留しやすく、その大部分は消毒薬耐性遺伝子qacAを保有、院内感染の起因菌となるが、その他の大部分は一過性に検出されるのみで原因とならない。(4)Clostridium difficileは海外では院内感染の起因菌として増加傾向にある。培養・同定や毒素検出の技術的問題から日本ではまだ少ないが、芽胞形成菌であり今後の対策は必要である。
結論
(1)チェックリスト、フローチャートを多用して、誰でも適切な判断・行動を選択できる「院内感染防止手順」を改訂、発刊した。(2)ハイリスクポイントに基づくターゲットサーベイランス、教育研修、強化週間は効果的である。(3)サーベイランス及び院内感染事例からの分離菌でMRSAのゲノム解析を行ったところ、施設内に長期間停留する特別なクラスターAは、消毒薬耐性遺伝子qacAを保有し、院内感染の起因菌となる。(4)Clostridium difficileは欧米で院内感染の起因菌として増加しつつある。日本では現状把握のため、技術支援と特別な対策を準備する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2005-06-02
更新日
-